今昔を生きる少女
□第漆話 使用時間
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「髪飾りのこと、聞かぬのだな…」
久遠がぽろりと言葉をこぼす。
長い廊下を白哉の後ろについて歩きながらその背を見つめた。
「聞いた所でどうにもなるまい」
「…そうだな」
自身の髪から外されグリムジョーに盗られた、二組一対の真紅の髪留め。
一つはヤツが、もう一つは久遠自身が持っている。
緋真に貰った大切なものだ。
『緋真…これは……?』
『私から久遠様への感謝の印です』
『ありがとう緋真、大切にする…!』
その数日後、髪留めをした久遠の姿を見る事なく緋真は……。
ふるふると頭を振る。
気持ちを切り替えるかのように、動じない背中に話しかけた。
「今四十六室は無いんだろ?山じ…総隊長の所へ行くのか?」
「…そうだ」
懐かしさで苦しいくらいだと久遠は思った。
この廊下を渡るのは何百年ぶりだろうか、と。
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