今昔を生きる少女
□第陸話 連行
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「…朽木、いるんだろう?」
久遠がそう言うと、道の角からルキアが現れた。
申し訳なさにおされ、ルキアは一礼する。
「申し訳ありません、勝手に…」
「気にするな、私が悪いのだから」
久遠ははっきりと言った。
その潔さに憧れるとともに、ルキアは少し不安になる。
そんな気持ちを知ってか知らずか、久遠は「少し話そう」と公園のベンチへルキアを誘う。
「傷の方は、…もういいのか」
「あ、はい。井上のおかげで」
そうか、と短く返事をし、久遠は遠くを眺める。
ちらとルキアの方を見ると、少しだけ赤くなっていた。
「あの、一護から聞きました」
久遠はルキアを見た。
嘘をつかない久遠の瞳は、かすかに揺れていた。
「この傷の、治りが早かったのは藤堂殿のお力添えがあったからだ、と」
「朽木…」
「心よりお礼申し上げます…!」
久遠は愛しいものを見るように目を細めた。
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