海色の瞳
□にじゅうろく。
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「ウミちゃんは…強いね」
織姫ちゃんは私を真っ直ぐ見据えてそう言った。
力強い眼差しが、私を射止める。
―――強いって言われるの、二回目だ。
『…コイツは弱くねェぞ』
『強ェ』
「あはは、強くはないなぁ。こっちに来てすごい涙腺緩くてね…」
言いながら肩を落とすと織姫ちゃんは、ううん!と可愛らしく否定した。
「ウミちゃんは凄いよ。さっきみたいに自分の考えをハッキリ言うとこなんか…あたし、真似できないや」
こんなのの真似したら人生が破綻しますよ!?
口に出しかけた言葉を飲み込んで、織姫ちゃんを見た。
栗色の髪、忙しなく動く瞳、くるくる変わる表情。
「あたし…、こっち来たばっかりでよく分かんないけど…」
「?」
「破面って、もっと恐い人たちだって思ってた。でも、なんか…優しいね」
――― 優 し い 。
「ホント!?」
「え?う、うん…」
そうだよ、破面のみんなってそんな恐くないんだよ。
むしろ優しくて癒されるんだよ。
「でも…」
「んん?」
「何考えてるのかは分からなくて、ちょっと恐いかな…」
「ああ、同感…」
遠くを見つめて呟いた。
そういえば。
「織姫ちゃん、今日この部屋泊まっていい?」
「?うん」
「本当に?嬉しい!」
可愛いィィイ!
織姫ちゃんが小首を傾げた瞬間、扉が開く音がした。