海色の瞳
□にじゅうさん。
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「サーシャ…、アンタっていつもそう」
「いつも?何かしてるかしら?」
不敵に笑うサーシャさんに向かって正面にいた女の破面が手を振り上げた。
…パン。
乾いた音が響いた。
女破面の平手打ちは、私の頬にクリーンヒットした。
…サーシャさんを殴ろうとするなんて。
「…茶番劇なら他でやってよ」
「貴方にサーシャさんをとやかく言う権利はないでしょう。…サーシャさんは、グリムジョーさんを真剣に愛してるんです」
―――貴方に、彼女の何が分かるんですか。
一瞥すると彼女は膝を私の腹に入れようとした。
…が。
「…何なの、アンタたち…」
私を、サーシャさんが庇ったのだ。
その細い体に今の衝撃が加わったのかと思うと、ぞっとした。
ずるずると床に落ちていくサーシャさんを何とか支える。
…うわ、いい匂(黙)
「…行くわよ」
逝ってしまえ!
心の中で(←重要)去っていく彼らに中指を立てて、思い切りあかんべえをした。
女性に手を出すなんて、たとえ加害者が女性でも最低だ。
「サーシャさん…大丈夫ですか?」
「どうして助けに入ったの。…ほら此処、赤くなってるわ」
白くて長い指が私の頬を滑る。
―――私が殴られれば済む問題でしょう?
困ったように綺麗に笑われて、私は赤面した。
「それに、あんなこと言って…良かったの?」
―――真剣に愛してるんです―――
「別に構わないですよ?…だって本当のことですもん」
サーシャさんは私の言葉を聞いて、一瞬きょとんとした表情になった。
そしてすぐに笑いだした。
気取ってるとか、そんな様子は一切なくて…純粋に零れた笑顔に胸を撃ち抜かれた。
(あ、うそうそ撃ち抜かれたら死んじゃう!)