海色の瞳

□じゅうしち。
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見たところ、普通の町並み。
戻ってきてしまったのだろうか。
はあ、と息を吐き出した。
とりあえず先ほど破面ウェイターに貰ったパンを口の中に放り込む。

「あんたもアフさんの知り合い?」
「んへっ!?」

もごもごと口を動かしながら私は声のした方を振り返った。
ちょっと待って、と手で制すと声をかけた人物は頷いてくれた。

「っはー…、ごめんなさい、何でした…?」

チャラい若者。
でもどっかで見た顔。

「アフさんの知り合いじゃないの?ほら、あの真っ黒な着物きて走ってる…」

私は言葉を遮った。

「ケ、ケイゴくん?ケイゴくんだよね!?」

そうだこの人ケイゴくんだ!
一護のクラスメートの浅野啓吾くん!
てことは此処はまだあっちの世界。
…大丈夫、戻れるはず。
ケイゴくんは少し混乱しているようだ。
あれ、でも何でアフさんと知り合いだと思ったんだろ?

「あ、えっと…覚えてないかも。私一時期この辺に住んでて、ケイゴくんと同じ学校通ってたんだけど…」

十中八九嘘ですが。
嘘は泥棒のなんとかって言われてたりしますが。
今は混乱を少なめにしないと。
ケイゴくんはそうなの?と言ってから考える素振りを見せた。

「や、でもすぐ引っ越しちゃったから覚えてないよ多分」

あくまで平静に。
余計な勘ぐりはさせないこと。
どこの軍人だってくらい、私はポーカーフェイスが上手いと思う。
でも一回崩されると駄目になる。
…それこそ、さっきみたいに。

「ごめん、覚えてないな…。でも可愛いし絶対覚えてると思うんだけどなー」
「あはは。冗談でしょう」

西に沈んでいく太陽が見える。
多分此処は鳴木市か空座町。
…だってほら、ケイゴくんって鳴木市民だし。
私は愛想笑いを浮かべた。

―――あの破面さん…、サーシャさんの目的は?
やっぱり、グリムジョーの従属官になることなんだろうか。


…グリムジョーは、私を迎えに来てくれるかな。




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