海色の瞳
□ろく。
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『…ウミ』
グリムジョーが呼んだのは私が私であるための呼称。
世界でたった一人だけ。
空野ウミという名で青雲高校に通っている二年生は私だけなのだ。
私は暫くフリーズしていた。
グリムジョーが私の名を呼んでくれたことが嬉しくて、それと同時に同じくらい信じられなくて。
ただグリムジョーを見つめ返す。
「…おい」
「っはい!?」
「てめぇいつまで俺の手握ってやがる」
そういえばそうだった。
頬を伝う涙はいつの間にか止まったようだが、彼の右手を私は握ったままだったのだ。
できることならこのままこっちの腕ごとグリムジョーが欲しいです。
「離せよ」
「はい、すいませんでした。私如きが触ってよいお身体ではないですよね…」
そーっと右腕を置いて、私は近くのソファまでいそいそと帰る。
自分から離れたが、ちょっとだけ寂しい。
遠くなったなぁ、なんて思いつつグリムジョーを見つめた。
腕切られて今まで普通に過ごしてきたからボロが出たんだろうな。
そう思うと、彼の孤独を垣間見た気がした。