コバナシ
□だって好きなんだ
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「リカがさ、お前のこと好きなんだって」
大好きなユキヤが悲しく笑う。リカはユキヤの大好きな恋人。僕を好きってバカだな。せっかくユキヤの恋人なのに。
「でも僕はリカを好きじゃないよ」
「俺のことなら気にしなくていいから」
気にするっつーの。
意味は違うけど。
「僕ほかに好きなひといるから」
「そうなの?知らなかった。俺の知ってるヤツ?」
「どうかな」
ユキヤだよ。ごめんね、友達のフリして。何だか悪いことしてるみたいだ。僕がユキヤを好きなことは、誰に許しを請えばいい?
「ごめん。さっきは勝手なこと言って」
「ううん」
濁りのない優しさが好き。迷いのない声色が好き。
「ユキヤ」
「ん?」
「明日卒業式の後一回帰る?」
「ああ。着替えに帰るよ。酔ったらロッカーの鍵なくしそうだしな」
「一緒に帰らない?」
「いいけど…おまえリカに呼ばれるんじゃね?」
そんなことどうだっていいよ。
「じゃあ終わったらすぐ帰ろ?」
「おま…ひどすぎだろ」
苦笑するユキヤの顔が好きだ。3年間、ユキヤだけが好きだった。そばにいられるなら友達でもよかった。叶わない思いを押し付けて全部壊す気なんてなかったんだ。
でも友達のまま卒業しても、きっとそのうち遠くなるから。大学の友達が、今の僕のポジションなんて簡単に奪ってしまうから。
だから決めた。