恥文

□言いたいけど言わない
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はらり、はらり。
白くて冷たい花が降る。
「なんで水になんの?」

――だから、雪は嫌。

まるで、口うるさい誰かのようで。血も死体も自分の想いも白い己で覆ってしまう。

――バカみたい。

お前は所詮溶けて白さを保てなくなるんだから。そんなことは、無駄。




[言いたいけど言わない]



壬生の早朝。リズミカルに鳴る廊下。怒鳴り声と水音、弾ける熱気。

「任務だ!!サボるな!」
「命令しないで」
「うるさい!!」
「ウザい」
「〜!!」

慣れた朝。

雪が視界にチラつく。

イラッとして拳を固めると喧嘩の相手とまともに目が合った。迷わず突き出す拳に容赦はない。

この漢が憎かった。
自分に害なす存在、悲劇の元凶。
殺してやる。
そう、ずっと思ってた。








けど。
狂との戦いで自分の中で何かが解放されたとき。美しく固まってしまった水を、溶かしてやろうと思ったんだ。

見ればいい。透明になって、汚いものも自分自身も。そして自由に流れていけばいいんだ。









――なんて、ヘンな俺。








今、あいつを待ってる。傍らには桜。

眠い。

「螢惑!」

視界に入る白銀。ちょっと見て目を閉じた。

「寝るな!」

ゴンっ
…いたい。

しょうがなく目を開けると、怒った顔。
髪の上を花びらが流れて落ちた。

「………ょ」

「は?なんだ??」

「なんでもない」

「…なんなんだ」



言いたいよ。
でも言わない。








まだね。


fin.

―――――――――――初めてに相応しい意味のわからなさです。
付き合う前になっちゃった↓↓

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