パラレル

□雲の上の先輩の背中
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一目惚れなんて、存在しないと思ってた。
でもあの人は私の心を掴んだまま離してくれない。
それなのに、あの人はきっと私の事なんて覚えていない。ずるい、ずるい。
でもそれが私の恋。








「渦巻先輩!これはどこですか?」
「第二倉庫、ついでに海野先生にライト下の台足りないこと伝えてってば」
「成都ちゃん、暗幕って予備ある?」
「ステージ下の右端の扉の中ですってばよ」


私が通う火影高校は部活動が盛んで、数々の部活が全国大会に出場している。そんなスポーツ学校はもうひとつ全国的に有名な事がある。
只今準備真っ最中の文化祭である。
保護者はもちろん、卒業生や他校の生徒、地域の方、様々な方が来られ、テレビに取り上げられることもしばしばある。そんな大きな文化祭は生徒会が運営することもまた、注目されているひとつである。
私、渦巻成都は生徒会に所属しているため、当然運営の準備がほとんどで、ステージ準備を任された私は、後輩や先輩たちに指示を出しつつ状況の把握をそして指示と、繰り返していた。


「右のライト、もう少し上だってばよ!」
「これくらいですか?」
「…よしっ両サイドオッケーだってばよ!」
「「ありがとうございまーす」」


嬉しそうな声が体育館に響いていた。他の生徒は悔しそうにそれぞれ言葉を発していて、思わず笑みが溢れた。
各自持ち場の作業が終われば昼休憩となっているから、仕方ないのだろうけど。


「成都、状況は?」
「っ!びっくりしたぁ、鎖佑先輩驚かせないで下さいってば!」


真後ろから声がかかり、勢いよく振り返れば、生徒会長の内波鎖佑先輩がいた。先生からの信頼も厚く、皆の憧れの的、雲の上の存在。更に容姿も格好いい。モテモテな先輩。
かくいう私のも先輩に恋をしてる。先輩を追いかけ生徒会にだって入った。少しでも近付きたかった。
そんなこと当然先輩は知らない。きっと初めて会った時の事も知らない。

そんな先輩は少し苦笑いして持っていたファイルをちらつかせて云う。


「悪い、で状況は?」
「あ、はい。残りは司会席とスピーカーの調整、各クラスの応援段幕と飾りです。明日のリハまでには予定通りセット出来ますってばよ」
「判った。早いくらいだな、後よろしく頼む。また見に来る」
「っ、はい、任せて下さい!」


鎖佑先輩は少しだけ笑みを浮かべて去って行った。
たったそれだけなのに、心臓が煩い。格好よすぎる。ただ少し言葉を交わせるだけで幸せ。


「内波先輩あんな間近で初めて見た!ホント格好いい!モデルさんみたーい」
「だよねー、それでいて学年トップで弓道の全国大会でついに優勝!ホント雲の上の存在よね!」
「彼女が居ないのがふしぎー」
「ホント、ホント!」


苦しい。苦しい。幸せだけど、遠い。皆の憧れで、とっても素敵な人。
先輩が彼女を作らない理由は知らない。噂では忘れられない人がいるとか、でも噂は噂で。
どうして先輩を好きになったのだろう。
先輩、先輩。好きです。あの時から、ずっと好き。私はきっと先輩に振り向いてもらえなくても、ずっとずっと思い続ける。

先輩、大好き。



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