[御題]フォンダンショコラの香り *ホワイトデー企画*
「はい。試食(笑」
「・・・急に如何したんですか」
「どうしたって季節はホワイトデーですから」
「そんな事は分かっています。僕が聞きたいのは、どうして封真がフォンダンショコラを作っているかというコトなんですが」
「・・神威に貰ったから?」
意外と似合っているエプロンを腰に巻いた封真が、少し悩んだ顔で星史郎の問いに答える。
因みにソファで座っている星史郎は、その答えを聞き機嫌を悪くした。
片手には綺麗に成功した封真作・フォンダンショコラ。
「・・どーゆーことですか」
「そのままの意味です」
「神威から貰ったんですか。君が?あの神威に?・・・・信じられませんね」
「ですねー。口移しで貰ったんですよ、市販のヤツでしたけど」
「・・・・・・(無言」
「まあ食べてください。自分で食べてもよく分からないんですよ」
「・・毒が入っていそうな感じですね」
そう言いながらも、渡されたフォークでフォンダンショコラを口へ運ぶ。
その動きは少し遅かったが、美味しかったらしい。
食べた瞬間、見事なまでにピタッと星史郎の動きが止まった。
隣で立っている封真はニコニコ笑っている。
星史郎はその封真から視線を逸らすしかなかった。
・・・嘘だ、この封真がこんなに上手く作れるはずが無い・・。
というか昨日は冷蔵庫の中、小麦粉しかなかった・・
恐ろしいぞ、封真
一体いつ買出しに!?
「美味しいですか?」
「・・・え、まあ・・」
「そうですか。じゃあ侑子さんに渡して来ようっと。えーっと侑子さんとモコナと四月一日くんと・・」
なにやらフォンダンショコラを渡す人数を指折りして数えていく封真。
それを聞きながら、星史郎は再度フォンダンショコラを口へ運んだ。
・・やっぱり・・美味しい。
封真は人数を確認すると鼻歌を歌いながら、キッチンへと入っていった。
星史郎は膝に乗せていた本をソファに置くと、フォンダンショコラを黙々と食べ続けた。
『あら、フォンダンショコラ?』
「ええ。ちょっとホワイトデーというコトで、神威に渡してもらおうと思って」
『私は渡したのに返ってこないのよ。・・ホワイトデー、過ぎてるのに』
「そうでしょうね、小狼くん達は忙しいですし。・・ああ、このフォンダンショコラ、侑子さん達の分もありますから。どうぞ」
『ありがとう、気が利くのね』
「対価はこれでいいでしょうか?」
『十分よ。じゃあ神威達に渡す前に、3つ、貰って置くわ』
「はい。宜しくお願いします」
『バレンタインデーに神威から・・ね。進展したの?』
「ええ、まだ嫌われてますけど」
『・・・今の内に楽しみなさい、いつ消えるか分からないものは・・、今の内に楽しんでおくものよ』
「はい」
通信機のスイッチを切る。
さあ・・これで、ホワイトデーも終わりだ
今度神威に会ったら、感想でも聞くか。
クスクス笑いながら、リビングへ戻ると、星史郎は読書を再開させていた。
ソファの隣のテーブルには、からの皿が乗せてあった。
それを見て、封真の瞳が少し輝く。
「食べてくれたんですか」
「少しお腹すいてましたしね。・・何か?」
「いえ、何も。・・・ありがとう、兄さん」
「そう素直になられると気持ち悪いですね・・」
今年のホワイトデーは、少し兄さんとの距離が近づいたような気がした。
おまけ。
「ッ、あの変態!!」
「わぁ〜美味しそう。僕の分まで作ってくれたんだ」
「昴流!食べるな、毒が入ってるかもしれないぞッ」
「え?美味しいよ?」
「(もう食べてるっ・・)・・・すばるぅ〜・・」
「はい。口あけて」
「むぅ・・(むぐむぐ」
「美味しいでしょ?」
「ん・・美味しい・・」
侑子から送られてきたホワイトデーのフォンダンショコラ。
神威はバレンタインの日のことを思い出し、顔を赤くしていた。
end.
2008.3.16