[御題]クリームの口溶け








 
 「何1人でエロい顔してるんだ?」
 「・・・エロい顔なんてしてないっ」

 小鳥が作ってくれたケーキ。
 真っ白のクリームの上にのっていたラズベリーを盗られ、神威がむすっとした顔で封真の声に答える。
 材料があったから作ってみたの、とさっき小鳥が持ってきてくれた。
 勉強中だった封真の手を止めさせ、やっと絡んでもらえると思った矢先。
 いきなり封真に「エロ顔しても今日はやらないぞ」と言われ、かちんっと来た。
 その所為でむすっとしてる。
 別に今日は封真に抱いてもらう為に来たのではない。
 暇だったから遊んでもらおうと思ってきたのだ。
 なのに、このむっつりスケベ!
 エロい顔なんてしてないのに!
 神威は口を真一文字に結ぶと、さっきの仕返しだとでも言うように封真のラズベリーを奪った。
 口の中に放り込む。
 だが放り込んだ瞬間、神威の表情がさっと凍った。 

 「ッ、すっぱ!」
 「外れだな。神威のは甘いぞ(笑)」
 「かえせぇ!俺の!」
 「嫌だ。もう口の中」
 「嫌じゃないっ、最後に食べようと思ってとっておいたのにーっ・・・」

 確かにこのラズベリーは綺麗にクリームの上にちょこんとのっていた。
 ・・最後に残して、食べるつもりだったのか・・
 まあそうなら少し悪い事をした。
 神威がラズベリーが好きなのは知っていたし、欲しいと言われれば自分の分をやるつもりだった。
 神威の表情が落ち込む。
 封真は口の中に入れたラズベリーを噛もうにも噛めず、動きを停止させた。
 つんつんとフォークの先で残った、小さいラズベリーをつつく神威。
 封真が少し肩を落とす。
 立ち上がる。神威の横に移動し、すっと顎に手をかける。
 そして誘う。口付けろと。
 神威はフォークを置くと、封真の首に腕を回して唇を重ねた。
 封真が舌を差し入れてくる。
 神威も入れ返して、封真の口内にある盗られたラズベリーを取り返しに行く。
 流れ込む唾液など全く気にせず、封真は取られまいと舌を動かした。
 それを神威が舌先で感じ取り、追いかける。
 顔の向きを変え、唇の触れ方を変え。

 「ん、ふっ!・・ッ・・ぅん・・」

 隙間をすり抜け、目当てのものに触れる。
 封真も触れられたと感じ、神威の口の中へと送り込む。
 満足げに離そうとした神威の頭を押さえ、唇を離すのを躊躇う。
 神威がラズベリーを噛む。
 じわりと滲み出てきた果汁を封真の舌が舐める。
 口いっぱいに広がるラズベリーの香りと、酸味。
 神威が眉を寄せ、封真の肩を叩く。

 「・・ぁ、はぁ・・っ。ハ・・あ・・、・・・・ッはあ、・・」
 「・・・・ご馳走様」
 「ばかっ、・・・なんで封真まで・・食べるんだよ・・」
 「だって俺の口の中にあったものだから」
 「苦し・・息、できな・・か、・・・・た・・」
 「俺はもう息継ぎの仕方、覚えたけどな。・・まだ神威は初々しいから、覚えてないみたいだが」
 「毎回毎回、やってくるのは封真だろ。やるなら息継ぎの仕方、分かるのは当たり前だろっ!むっつりすけべ!」
 
 むにーっと頬を引っ張る神威。
 封真はテーブルの上のケーキのクリームを指先に絡ませると、文句を言う神威の口の中に其れを突っ込んだ。
 「むぐっ」と何か言おうとした神威の言葉が詰まる。
 
 「はいはい。・・今度からは俺も息継ぎが出来ないような激しいのにするから」
 「むぐぐっ」
 「そんな声を上げるな、馬鹿。欲しくなるだろ」
 「・・・・っ、はぁ!だから俺はエロ面なんてしてないってば!」

 ちゃんとクリームを舐めてから、神威が封真の指から顔を離す。
 
 「そうか?抱いてくれと言わんばかりの顔だったような気がする」
 「俺はそんな顔しないーッ!」


 溶けたクリームの味に、神威は何となく頬を赤く染めていた。
 最近酷い封真の指を舐め回すと言う癖も、治る見込みは先延ばしになってしまった。





 

 end.
 2008.3.8



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