スパイリ小説


□自己犠牲
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「スパーダっ!後ろっ!」
「っ!!!」

目の前の敵に集中していたためか、後ろの気配すら感じなかった。
「セッシブバレット!スプレッド!」
イリアの攻撃を喰らっても敵は止まらなかった。そのままスパーダの背後に迫っていく。
「(クソっ!間に合わねぇ!)」

スパーダは背中に走る激痛を覚悟していた。でも、何も感じなかった。

「(あれ・・・?死んだか・・?)」
そう思って振り返ったとき、そこには信じられない光景が目に入った。
「イリア・・?」
「はぁ・・・はぁあ・・」
イリアはスパーダの後ろに立って、彼の身代わりとなって敵の攻撃を真正面から受けたのだ。その分の負担は大きい。
「ゲホゲホ・・・スパーダ・・・大・・丈・夫?」

するとイリアはそのまま後ろに倒れた。彼女の身体が地面を打つ前にスパーダは急いですくい上げる。
「イリア?大丈夫かよ!?お前!」
反応がなかった。呼吸をするだけでも辛そうだった。
「ルカ!エスケープの準備しろ!」
そばで戦っていたルカが言うとおりにする。
「わ・・・分かった!!」

イリアを抱きかかえたスパーダと一同は、一番近くにある町へと急きょ向かった。アンジュと町の医者は、出来る限りのことをやったという。
「後は天に任せるしか・・・」
「(そんなっ!!)」

イリアの容態は一向に良くならなかった。さっきの攻撃の毒が回ってきたらしく、どんどん顔が青白くなってきていた。そんな中、アンジュはスパーダに解毒薬を調合するための薬草を買いに行かせた。

ポツ・・・ポツ・・ポツ・・

さっきの快晴はどこへ行ったのやら、小降りの雨が降り出した。

「いやな予感がするぜ・・・」

スパーダはお使いをいち早く済ませ、宿屋へ大急ぎで戻った。

中の雰囲気は最悪だった・・・

リカルドは雨を見ながらなにやら独り言を言っているし、エルマーナはアンジュにしがみついてすすり泣きをしていた。ルカは・・・大粒の涙をポロポロ流して、目は真っ赤だった。
「ど・・・どうしたんだ!?何かあったのか??」
「落ち着いて聞いてね、スパーダ君・・・イリアがね・・・イリアがね・・・」
言っているアンジュ本人も落ち着きが無く、真っ赤な目をこすりながら、言葉を飲み込んだ。

「イリアが・・・どうしたって!?」
「イリアが・・・イリアが・・・」

「死んじゃったの・・・・」


「――――!!」

「な・・・なんだよ・・・冗談なんか言ってる場合かよ!アンジュ、薬草買ってきたぜ。早くイリアの薬作ってやれよ。」
アンジュは首を横に振った。
「もう、イリアはお薬なんていらないの・・・お薬なんて無意味なの・・・」
「アンジュ!てめぇ・・・!ルカ!イリアの見舞いに行って来ようぜ!」
「さっき行ったよ・・・イリアの最後の言葉は・・・『ありがとう』・・・って・・・」
「嘘だろ!?」

スパーダは部屋に入っていった。
「イリア、しっかりしろよ!なぁ、イリア!」
イリアの肌は恐ろしく冷たかった。さっきまで・・・一緒に戦闘してたのに・・・
「イリア・・・イリア・・・イリアァァアアアア!!」
スパーダは自分が情けなかった。前世に続いて、現世まで彼女を守ってやれなかった・・・

「己を殺し、永久の礎にせよ」

自己犠牲を意味する騎士の心得だった。
「俺は・・・またお前を守れなかった・・・・来世でこそ・・来世でこそ守ってやる・・・ありがとうな・・・そして・・・すまねぇな・・・」
そう言うとスパーダは剣を抜いた・・・・

スパーダとイリアは仲間たちに発見されたときは、仲良く手をつないで息絶えていた

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