輝く物語


□仲間
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苦労人?

『僕のことか?』



リオンは溜め息をついた。

そして今自分が抱えている女を見下ろした。

いつもの彼女の強気な態度はどこにいったのやら。
捻挫で足が痛いと訴える彼女は、乙女らしいしおらしさを取り戻していた。



痛い。

それは彼女だけではない。

彼女を抱いている自分の腕も悲鳴をあげている。
それもそのはず。
自分が女性をこのような形で抱えたことは一度もない。



しかし今彼女を降ろしては格好つかない。
ただでさえ華奢だと呼ばれているその身体を、
さらに強調するようなことはしたくはない。


歯を食いしばって必死なのだが、
ダンジョンの出入り口が分からない。
なんとか敵を避けて歩いているが、このままだといつ遭遇してもおかしくはない。
自分なりにも一生懸命探しているのだが・・・。



辺りもだんだん暗くなってきて不安だ。
仲間にSOSを出す他ないだろう。
まあ、SOSを出さなくても、そのうち探しに来るだろうが。



「リオン、お腹減ったぁ〜」


「今休む場所を探しているんだ。少し待て。」


ダンジョンの入り口からは随分掛け離れた場所だが、安全だと確信した場所に、イリアをそっと降ろした。
すると、さっきまで足の痛みを訴えていたのが嘘のように、イリアはぴょんぴょんと薪を探しに行くのだった。
リオンはへなへなと座り込む。



「貴様・・・捻挫はどうした!?」


「ずーっと前に良くなったわよ!ただ、あんたが必死になってる顔がおかしくてさぁ〜。」


気付いていたのか。
リオンは不機嫌そうに膨れた。


「僕をバカにしやがって・・・。」


「別っに〜?」


そういうとイリアは拾ってきた薪をどすーんとリオンの膝に置いた。


「ほら、火おこしてよ。」

「僕は闇属性だ、貴様こそどうにかしろ。」

「私は真逆で水よ。ああ、もぉ・・・」

ヒステリックになりながら頭を抱え込むと、イリアは何か策はないかと、考えた。
すると、リオンはポケットからマッチを取り出して、火を擦り起こした。
イリアは恨めしそうにリオンを睨む。


「何で最初から出さないのよぉ・・・。」

そんな彼女を無視すると、リオンは剣を握り、闇の中へと足を踏み入れた。


「野草を探して来る。」


「え、ま、待って!あたしも行く。」


慌ててイリアはリオンのあとについて行った。
辺りは真っ暗。
何を頼りに野草を探すというのか。
大人しく彼の後ろを歩いていると、リオンはふと足をとめた。
そっとひざまずくと、一枚の葉を手に取って調べ、頷き、剣を引き抜いた。
さくっと葉を切り回収していく。
イリアは目を丸くした。


「分かるの!?」

「無論だ。このくらいの知識は備え付けられている。」

「へ、へぇ・・・」

「貴様も飯が食いたければ手伝え。」


イリアも、ポケットにその野草を詰め込んだ。
そしてそそくさと帰ろうとするリオンに、


「ちょっと待ったぁ!」

「何だ。」

「肉が無いじゃないっ!肉が!」

「我慢しろ。夜間に出没する魔物は危険だ、それに―っ」

「危ない!」



イリアが拳銃の引き金を引くと、リオンの背後にいた魔物はばたりと倒れた。

気がつかなかった・・・。

それ以前に、女に守られたということがリオンにとってはショックだった。
男のプライドが・・・。



「リオン、持って!」


そういうと、イリアはリオンにその大きな魔物を投げつけたのである。
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