輝く物語


□れっつごーリオンさん。
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ふー、やれやれ。


今日の依頼も疲れた。
厄介なモンスターを蹴散らして、挙げ句の果てにはディセンダーまで担いで。
全く、世話のかかる英雄だ。

そんな思いに浸りながら、リオンがホールへ行くと、何の前触れもなく突然・・・。


「リオンさんリオンさん!」

「好きな食べ物はっ!?今日の依頼はどうだった?」


赤毛だということ意外は似ても似つかない少女二人がリオンにぐいぐいと迫る。
周りの男性陣から来る冷ややかな視線。
無理も無い。
黙っていれば、かなり美少女な二人。
その二人に囲まれハーレム状態となれば、くだらない嫉妬もするだろう。

リオンは冷静に対処するつもりだった。



「何だ、騒々しい・・・。」


スタスタと歩きはじめると、まるで子犬のように二人は後から付いて来て、再び質問の嵐を振らせるのだった。


「いつもどんな感じで剣の練習してんの!?」

「好きな女性のタイプを教えてください!」


まるで、どこかの突撃取材のようだ。

しかし無視を決め込めばいずれは自分のことなぞ飽きるだろう、とリオンはとくに気にかけることもなかった。

事実、すぐに質問は止んだ。
どこかに行ったのか、と安心して振り返ると、そこにはまだ二人が大人しく歩いていた。
リオンが振り向いた事に気がつくと、関心を持ったのかと思い、質問を再会した。


「ルビア、イリア。」

「はいっ!」

「僕に何の用だ。放っておいてくれないのか。」

「そりゃあ無理ね。だってスパーダに頼まれたんだもん。」

「アイツに頼まれたのかッ!?」



な、何!?

男がっ!?


・・・待て待て、落ち着け、自分。
こんなに大きな船なのだ。
色んな人種がいてもおかしくない。
これが普通なのだ。
さあ、落ち着け・・・。


リオンの顔色を伺うと、イリアは笑い出した。

「イッシッシ!バーカ!ちっがうわよ!スパーダは、あんたとか、ガイとか、ユーリとかが、どういう風に修行してるか興味あるのよ!
ほらぁ、あんた騎士団長じゃない?
ユーリも騎士だったし、ガイも騎士に結構近い紳士的な奴でしょ?
ライバル心よ。


でもスパーダに言っちゃおうかなぁ〜?
あんたが、アイツのことゲ―」



「余計なことは言わんで良い!」

しまった、自分の早とちりだった。
恥ずかしくて、顔から火が出そうだ。


「じゃ、じゃあ最初からそう言えばいいだろう!何故個人的なことまで聞きたがる!?」


「それは私でーす!」

ルビアが生き生きとした言い方で告げる。


「将来、リオンさんみたいなカッコいい人と結婚したいなぁーって思ってて。」


リオンは一気に青ざめた。
コイツを嫁に貰うのか。
だったら一生独身でいい。
毎日癒しであるはずの家庭が、余計ストレスに感じてしまうだろう。
女は静かな奴がいい。

将来、きっと自分はばりばりの亭主関白なんだろうなぁ。



すると、甲板への入り口からカイウスがにこやかにスキップしながらやってきた。
左手にはピンク色のチューリップを持って。

リオンとイリアを無視。
視線はルビア一直線。

まるで獲物を見つけた獣のように、猪突猛進する。


「ルビアー!」

くるりとルビアが振り返る。



「あら、カイウスじゃない。」

「そこのフィールドでルビアのスカートそっくりの花がたくさん咲いてたんだッ!
覚えてるか、お前の誕生日にあの花で花束を作ったらさ、お前すっごく喜んでたじゃないか。
それ思い出してさ、一本摘んで来たんだっ!」



そしてルビアにチューリップを差し出す。
ルビアはしばらくそれを見つめていると、カイウスから受け取った。
反応が気になるカイウスは、胸を躍らせながらルビアを見ていた。
すると。




ぽい。







・・・





えぇえええええええ!?!?!?!?



リオンとイリアの目が点になった。
可哀想なカイウスは涙目。
ルビアは微笑むと、言うのだった。



「今リオンと話してるから、邪魔しないでね。」



ガシャン。

カイウスはショックでその場に倒れ込んだ。
そして泣き出した。


「うわぁあぁあああんっ」




酷っ。



困り果てたリオンは、次第にカイウスに手を差し伸べる始末。

しかし、予想外な事に。




「お前のせいで、ルビアがぁ・・・ルビアがぁあああ!」


莫大なマナを感じ、次の瞬間カイウスは獣人化していた。
そして、何の罪もないリオンを攻撃する。


「何で僕がーッ!」


次の瞬間、リオンはイリアとルビアを両脇に抱え、マッハの速度で走っていた。


「ちょおっと!痛いじゃない!ちゃんと抱えなさいよ!」

「リオンさんったらたくましいわぁ〜。」


「やかましい!お前のせいでッ!」


三階の展望室に辿り着いて気付いた。
行き止まり。
デッドエンド。

じりじりと近寄るカイウス。
じわじわと湧き出る冷や汗。

リオンはもはや、冷静な対処ができなくなっていた。


「おい、ルビア!さっさと仲直りしてくれえええ!」

「むぅ・・・仕様がないなぁ。」


ふっさふさの体毛に覆われたカイウスをぎゅっと抱きしめると、ルビアは言った。


「あったかーい。」



え?



すると、何故か、カイウスは衝動が収まった。

「だろ?」

「ねー、カイウス。あたしもっともっとお花が欲しいなー。後で二人で摘みに行かない?」

「それって、デート!?わーい!!」



驚くべき変わり様。
すっかり上機嫌になったカイウスはルビアの手を引いて、二階へ戻るのだった。


「単純な奴め。」



しかし、平穏はそう長く続かなかった。
カイウスとは入れ違いに、スパーダが。
リオンとイリアだけがいることに眉間にしわを寄せ、ドスがかかった声で聞いたのだ。


「お前等、何してんだ?」




「あら、良い香り。」


パニールがホールに落ちていた花を花瓶に生けた後だ。

魔法がぶつかりあったのは。



end...?
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