輝く物語


□比べっこ
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「あ〜あ。いいな、イリアは。」

ため息をつきながらルビアが口にした一言。
そして羨ましそうにイリアを見つめると、またため息。


「何で?」

とイリアが聞くと、まるで駄々をこねる子供のように、ルビアはこう続けた。

「イリアの周りにはカッコいい男の子が二人も・・・」

「はぁ!?カッコいい!?」

イリアは貧弱な少年と、彼女の悪友を想い浮かべた。

「ふざけてる、の間違いでしょー?」


「だ、れ、が、ふざけてる、だぁああ!」


気付けば誰かが自分の事をヘッドロックしている。
声の主は振り返らなくても分かる。
ぱさぱさと頬に彼の緑色の髪が触れた。

するとルビアは顔を赤らめて、乙女らしくうっとりと呟いたのだ。


「スパーダ・・・」

いかん、彼女からハートマークが漂っている。

そんな彼女を見ると、嫌味っぽくスパーダは言うのだった。


「よぉ、ルビアじゃねぇか〜。あいっかわらず、可愛いなあー。」

「もう、イヤだー!スパーダったら!・・・でもカイウスもお世辞の一つも言えないとね。」



むっすー。

イリアの頬が膨れた。
彼女を無視しつつも、スパーダは今も尚、ルビアを口説こうとしている。


「お前の服女らしくって可愛いよなぁ。コイツの服なんて色気も素っ気も無くってさぁ―。」

「色気ぐらいはあるわよ!ほらぁッ!」

ヤケになりながらジャケットを脱ぎ捨てた。

その大胆なチューブトップに二人は言葉を失った。


「新世界ッ―・・・」

「イリア、そんなセクシーな服着てたんだぁ。あたしもセクシー系に変えようかなぁ。」





そのとき。



「駄目だよ!」

二人の少年の声が重なった。
そして、部屋に入るや否や、一人はさっと青いジャケットをイリアに着せたのである。
そして、睨む。
スパーダを、睨む。


「な、何も見てねぇもん!」

カイウスは、ルビアの腰を掴み、ふんわりとした花のスカートを撫でる。
すぐさまルビアのビンタが炸裂する。


「キャーっ!カイウスのエッチーッ!」

「いや、俺はそういうつもりじゃなくてッ!」


何だこりゃ。
ルビアがカイウスをロッドで殴っている。
しかし、カイウスは口ほどにも嫌がってはいない。
このバカップルを見つめていると、ほのぼのとした気持ちになるのはイリアだけか。
ルカはスパーダを睨みながら、怒鳴った。

「どうして君はいつもそう、デリカシーっていうものを知らないんだっ!カイウスの垢を煎じて飲むがいい!」

「な、てめぇ!いっぺん表出ろっ!締めてやる!」




「どうしてルビアはドSなんだよぅ。たまにはイリアを見習ってドMになれば―」

「誰がドMですってッ!」


室内で喧嘩祭り中。
家具が壊れる。
電気が壊れる。
空気が壊れる。

「あぁー!カイウスがかっこ良ければいいのに!あたし、イリアになりたーい!」

「イリアもルビアと位置変わってみればいいんじゃねぇ?そしたら乙女らしさの欠片でも見つけやがれ!
俺もイリアの代わりにルビアが回復してくれたら万々歳だっつーの!」


スパーダが言った一言にピシャリ。
イリアの言動が止まった。
そしてくるりと振り返ると、いつもより低い声でボソリ。

「乙女らしくなくて悪かったわね。今日の依頼、ルビアと行ってくれば?」

すると依頼内容が書き記されている紙をスパーダに握らせ、部屋を出て行った。
ルカ、カイウス、ルビアの視線が集まる。


「お、俺が悪いのかよっ!」



「怒らせたー。」

「泣かせたー。」

「あたし、イリアんとこ行ってくるぅー。」



一気に険悪な雰囲気になる部屋。
ルビアが部屋を後にすると、スパーダはため息をつき、ゆっくりと椅子に腰掛けた。
帰って来たら謝るんだぞ、とカイウスが呟く。
ルカは無言。

そんな中。スパーダはつくづく女心とは難しいものだ、と思うのであった。


end

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