スパイリ小説2!!
□拝啓愛しい君へ、敬具思いをよせる私
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「なん・・で・・すって?」
イリアは震える声でスパーダを見上げた。
スパーダは視線を反らすようにチラリと横を見る。
拝啓愛しい君へ、敬具思いをよせる私
いつものように、スパーダに温かいコーヒーを差し出すと、彼は首を振った。
『いらないの?』と聞くとスパーダはただただコーヒーカップを見つめ、『なんか言いなさいよ!』と怒るイリアの声を聞いていた。
創生力の旅は無事終わり、スパーダが胸の内に秘めた思いを打ち明け、イリアとの交際が始まった。
サニア村にいたら、まともに顔も見れないから、とスパーダが二人で住めるように小さな家を借りた。
イリアはそこから毎日のようにサニア村に通い、村を立て直していたのだ。
しかし今日は彼の顔色が優れない。
唇をきゅっと噛み、何かを堪えるかのように窓を見つめている。
思い切って『大丈夫?』と聞いてみると、彼はゆっくりとイリアの方を見つめたのである。
そして『大事な話だから聞いてくれ』と話し始め、冒頭に至るのである。
「だから、海軍兵学校に入ることに決めた。」
「それって、四年制の・・一年に一回しか家に帰れないのよね・・?」
「・・・あぁ。」
「へぇ・・あんたがそんな事考えていただなんて意外。ん〜でもまぁ、頑張りなさいよ。」
イリアはくるりと背を向けると、台所の方へ歩いて行った。
スパーダが決めたことに、『寂しい』だなんて言いたくないから。
彼が最後に見るのが自分の泣き顔であってほしくないから。
「イリア・・・」
「何食べたい?今日は何でも作ってあげるって!えぇっと、入学祝いって奴?まぁいいわ!何がいい?好きな物食べられるのは今日でしょ、明日から始まるんだから!」
「あのさ・・もしアレだったらさ、他の男作ってもいいから・・・」
「はぁ!?」
「いや、ルカだってよぉ・・いい奴だから・・俺みたいに放ったらかしになんかしねぇから・・・その・・付き合ってもいいっていうか、俺の事なんか忘れ―」
「やめてッ!」
イリアはスパーダの方へ歩み寄ると、横ビンタを一発喰らわせてやった。
「馬鹿スパーダッ!忘れられるわけないじゃん・・・待ってるから。ちゃんと待ってるから・・・ね?」
「あぁ・・・」
「イリア、ハグしていい?」
「今日は特別に何回してもいーわよ。」
「へへッ!」
スパーダはイリアの腰に腕を回し、ギュッと抱き寄せた。
イリアも彼の背中に腕を回し、温かい胸の中に顔を沈めた。
いつまでもこうしていたかったけれど。
時間とはどうしてそんなに酷なものか。
明日、という日付までもうそんなに時間が無かった。