短編小説
□いつも一緒。
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ベアはいつもベッドの上。
トニーが小学校へ通い始めると、ベアはいつも部屋のベッドの上でお留守番。
それでも帰ってきたら、ずっと一緒だった。ぎゅっと抱きしめると、ベアに心が通って、トニーも嬉しかった。
そんなある日。
「ただいま、ベア」
「おかえり、トニー」
学校からが帰ってきたトニーは、ベアをぎゅっと抱きしめた。
それから机の上に鞄を置いて、妙に上機嫌な様子で笑った。
気になってベアがその行動を見ていると、トニーは鞄からロボットを出した。
小汚いおもちゃのロボット。
ベアより少し小さくて、堅くて冷たい、ゴツゴツした体。目はベアと同じでまん丸だけれど、瞳はくすんだ金色だった。
トニーはロボットの身体を丁寧に洗ってあげた。
そうすれば、小汚い身体が少しは見栄えのいいものになった。
それでも、くすんだ瞳はくすんだままだった。
「ベア、この子はごみ収集所で捨てられていたんだ。仲良くしてあげてね」
それからロボットは部屋の本棚の上に置かれた。
トニーはベアと同じくらい、ロボットを大切にした。ベアの心はぎゅっとなった。
「君、名前はなんていうんだい?」
シンと静まり返った部屋で、ベアはロボットへ尋ねた。
しかし、ロボットは返事をしなかった。
ピクリとも動かないで、まるでベアに反応しないのだ。
「僕はベアっていう名前があるんだ。トニーにもらった名前だよ。 僕はトニーにぎゅって抱きしめられて、心を知ったんだよ。
君は、ぎゅっとされたことがあるかい? ぎゅっとされるとね、温かい心になるんだよ。トニーも僕をぎゅっとすると幸せな気持ちになるんだ。
君をぎゅっとしたら、幸せな気持ちになるかい? 君はゴツゴツしているし、とても冷たい。
一昔前には人気があったロボットなんだろうけど、今じゃもう時代遅れだよ。
君はリモコンがなければ動くこともできやしない。動けないロボットなんて、ただの鉄の塊さ、すぐに飽きられちゃうよ」
早口で言ったベアの言葉に、ロボットは答えなかった。
返事はなくて、部屋はシンとしたままだった。
ベアは自分の言ってしまった言葉を思い出すと、すごく心がぎゅっとなった。