SandLand

□SandLand4ー雲の行方ー(前編)
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――4年前――




(くそ、くそっ)



心の中で罵倒の言葉を繰り返し、奥歯をかみ締めた。

握った拳が痛いことにも気づけないまま、走っていた。


周囲は壊滅した村がある。

長く住んでいた村が、数日留守にした間にこんな変わり果てた様子になるなんて。

配慮が足りなかった、そう痛感せざるを得ない。


倒壊した家々から火の手が上がり、焦げ臭い。

視界の端には地面に転がる村人の姿も映っていた。

もしかしたら燃えている家にも人がいるのかもしれないが、それを助けるなんてことは頭によぎりもしなかった。

一直線に村の最奥にある教会へ飛び込んだ。



「火楠(カナン)! デイジー! アレン! ホムラ! ニコル!?」



教会で育てていた孤児たちの名を呼ぶ。

誰一人返事をしない。

教会も損壊が激しかったが、幸いに火の手は回っていなかった。


半壊した建物の中でデイジーとアレンの亡きがらを見つけた瞬間、怒りと悲しみが同時に巻き起こった。

自分でも一瞬で頭に血が上るのが分かる。

堪えきれない怒りが生まれても、なんとか我を忘れなかったのは、ほかにも子がいるからだ。


教会の中を探し回ると、がれきに埋もれた子どもたちを数人見つけた。



「くそ、なんで、こんな」



目の前の光景と匂いに気持ち悪くなって、吐いてしまった。

呼吸を整え、再び教会の中で子どもたちを探す。

火楠、ホムラ、ニコル、3人の姿が見当たらない。


庭に入ったところで、小さな体が転がっているのを見つけた。



「ニコル! おい、ニコル!?」



力強くぐらぐら揺らす。

ぐったりと力ない体を感じ取って、もう死んでしまったのかと思ったが、わずかな呼吸音が聞こえた。

それに気づいたのと同時に癒しの魔法を使った。

両手から金色の暖かい光があふれて、ニコルを包む。



「うっ、うぅ、だ、誰? シスター?」



頷くと、ニコルの顔にわずかな生気が戻った。


冷たくなっていたニコルの体を抱き寄せてやると、幼いニコルは年相応にかわいらしく笑った。



「あったかい」


「なにがあった? しゃべれるか、ニコル?」



ニコルは悲しい顔をした。



「わからないの。いきなり、みんな倒れて、教会も崩れて。

火楠が、わたしのことかばってくれた」


「そうか。火楠とホムラはどこだ」



火楠とホムラには加護の魔法を与えてある。

そう簡単に命を落とすことはないはずだが。



「連れていかれちゃった」


「どこに? 誰が?」


「わかんない、わかんないよぉ」



泣きじゃくるニコルを、シスターは落ち着くまでずっと背中をさすってなだめてやった。





 
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