Twin

□第三章 縛られる者
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 深い深い森の奥。


「ハァハァ……逃げないと。早く遠くに……」


 荒い呼吸で一人の少年は走っていた。

 目的地もなく、ただ遠くへ。

 と、そのとき小さく呟くような声が少年の耳に届いた。


「……さない……」


「え、声?」


 思わず少年は足を止めてしまう。


「誰か、いるのか……?」


 辺りを見渡して、少年が声を出すと


「許さない……お前だけは、絶対!!」


「は? うわっ!?」


 聞こえたかと思うと、突然横から拳が飛んでくる。

 ギリギリその拳を避けると、少年は地面に手をついて倒れた。

 その少年の前に一人の少女が立った。

 どうやらこの少女が殴りかかってきた人物らしいが


「……? 違う……誰、お前? ……痛っ!!」


 首を傾げた瞬間、少女はその場に倒れこんだ。


「って、おい!? どうしたんだよ!?」


「……歪められた……。私を歪めた、あいつだけは、許さない!!」


「ちょ、おい。大人しくしてろよ。……歪められたって、どういう……」


 少年は少女に尋ねるが、少女は突然動きを止めてその場にうずくまった。


「どうなってんだ? とにかく、この子の体調のほうが問題だな」


 改めて少女を見れば、傷を負い、呼吸も荒い。


「……今は、仕方ないか」


 ため息一つ吐いて彼はそっと札を取りだした。

 不愉快そうに札を見つめて、それからその札を少女へかざす。






 しばらくして、少女は木を背もたれにした状態で目を覚ました。


「……!? あ、あれ……私、えっと……」


 慌てて辺りを見渡せば、横に少年がいて


「気が付いたか。気分はどうだ?」


「……最悪。歪められた……。……あいつだけは、許さない。絶対に、殺してやる」


 淡々と少女は答えた。

 それには少々反応に困った様子で


「えっと、良く分からないけどさ、俺もちょっと急いでるんだ」


 少年は立ち上がった。

 それから手を差し伸べて


「でも、お前もこんなところで一人でいると気分悪くなるばっかりだろうし。
だから、俺と一緒に行かないか? お前の名前は?」


「……」


 少女は差し出された手と、少年の顔を交互に見て


「私は……」


 そっと少年の手を取った。



 
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