Twin
□第一章 天使に捧げる鎮魂歌
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深い深い森の中。
一つの足音が響いた。
日の光も届かない、小鳥のさえずりさえ聞こえない場所に。
一直線に進む背に翼を持つ生き物。
進む先にあったのは小さな店。
「これはこれは、天使とは珍しいね」
店に入ってきた人物を見て、店主は笑みをこぼす。
「異界の扉を開いてください」
「天使が異界へ? へぇ、面白いことでもあるのかな?」
口元に手を当ててまた笑う店主だが、天使のほうはいたって平然としている。
「答える必要はありません。それよりも……」
「はっ、天使ってのは真面目すぎて嫌になるね」
鼻で笑うと店主は続けて言う。
「良いよ、鍵をあげる。ただし、代わりに君の声をもらうよ」
「……っ!?」
喉に手を当て、天使は声もなく叫んだ。
そうして、異界の扉が開かれた。