短編小説

□想いを〜当てはめて〜
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   想いを〜当てはめて〜




 時は放課後。

 他の生徒はもう下校してしまっていて、教室に他の生徒の姿はない。

 閉め切った教室の窓から夕陽が射し込む。

 その教室の窓際の席に、一人の男子生徒が頬杖ついて座っていた。


「……はぁ」


 髪を肩のあたりまで伸ばした黒髪の男子生徒。

 その男子生徒は複雑な表情で、ため息一つ。

 と、その時


「どうしたの、ハルくん?」


「……!?」


 後ろから声をかけられて、思わず盛大に立ち上がって振り向く。

 すると、そこには女子生徒が一人いて、ハルと呼ばれた男子生徒の行動を見て、くすくすっと笑っている。

 その女子生徒はナツ。ハルの幼馴染に当たる人物。

 綺麗な長い茶髪を二か所止めている。

 座り直しながら少々不機嫌に見せたハルの顔を見て、ナツは笑うのを止める。


「どうしたの、ハルくん? 私が教室に入ってくるのも気付かないくらい、深刻な悩みでもあるのかな?」


「……まぁ、ちょっとな」


「そっか。聞いても良いなら、教えてくれる?」


「……」


 一度間を置くハルだが、ナツはそれを追及して聞くことはしない。

 ハルから向きを変えて、窓際へ経つと、その窓を勢いよく開ける。

 同時に、心地良い風が吹き込んだ。


「えへへ〜、気持ち良いよね。窓は開けてるほうが気分が良いよ、ハルくん?」


 髪をなびかせて、ニコッとほほ笑む。

 つられるようにして、ハルも軽く笑うと、そっと鞄から何か取り出して


「これ」


「手紙? あっ」


 受け取って、差出人を見てみてば、女の子の名前がある。隣のクラスの女子生徒。

 中身は見なくても、ハルの様子と手紙の雰囲気を見ればなんとなく予想が付く。

 ラブレターということらしい。


「ハルくん、モテモテだねぇ!!」


「……」


 感心した風に言われるが、ハルはどちらかと言うと、不機嫌な表情になってしまう。


「……もう返事したの?」


「いや」


「この子のこと、好きなの?」


「………………」


 長い沈黙。

 それにナツはどこか楽しんでる風は笑みを見せて


「う〜ん、その反応は、割と好きなんだね」


「っていうか、小学校からの付き合いがあるやつ。ナツも知ってるだろ?」


「うん。良い子だよね」


「良い奴ってのは知ってる。けど、どういう意味で好きかっていうと分からない」


 困った風に頭を抱えてしまう。

 そうしてさっきまで複雑に悩んでいたらしい。



 
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