短編小説
□時の君〜in fall〜
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時の君〜in fall〜
どこへ行っても、身を隠すために小さくなって、隅っこを求めていた。
誰にも気づかれないように。
転勤族という立場の親を持った以上これは仕方のないことで、そうするのが最善だ。
どうせどの関係も長くは続かない。
だから仲良くなった友人と別れて寂しくなるよりも、最初から一人でいれば良い。
幼い彼は震える身をぎゅっと抱えていた。
「大丈夫だよ、一人でいないで。一緒にいよう?」
震える身にも分かるほど、震える小さな手に触れられた。
目が合うと強張ったまま笑ってくれて、自分よりも小さな彼女も怖いのだと教えてくれた。
勇気を出して、彼のために手を引いてくれたと分かるから、その手を素直に受け入れられた。
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