短編小説
□KEY
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「ここが私の部屋だよ」
一つの扉の前で止まると紅蘭は既都を中に入れた。
続いて誰にも見られていないかを確認した後でドアを閉める。
「その辺に座って良いから」
電気をつけてから紅蘭もその辺の椅子に腰掛ける。
既都もその正面に座ると先に紅蘭のほうから
「私の名前は紅蘭、十五歳だよ。よろしくね?」
ニコッと微笑んで名乗った。
赤の混じった茶色の髪を肩を過ぎるまで伸ばした少女で、十五歳と言う割には幼い顔立ちをしていた。
「……既都。十六歳だ」
名乗られた以上、既都も短く名乗る。
紅蘭が手を差し出して握手を求めてきて、既都も少し悩んだ後で手を差し出した。
「で、既都は何でこの城に侵入したのかな?」
「……言わない」
「だろうね」
平然と言ってきた既都に紅蘭も平然を装って返す。
「そういう紅蘭はここに住んでるのか?」
辺りを見渡すと、可愛らしい装飾などがしてあるので、借りているような印象は受けない。
「う〜ん、住んでるとは少し違うね。確かにここは私の部屋だけど。えっと、私の親が王様と仲が良い貴族なの。だから私も城を自由に出入りできるの」
現在は両親が旅行に出ているらしく、たまたま城に泊まっているということらしい。
その説明を聞いてから既都は適当に納得した風にみせる。
「私は明日本当の家に帰るの。その時一緒に城から出してあげるね?」
微笑んで紅蘭は言ったのだが
「……嫌だ。俺はまだ城でやることがある」
既都は簡単に拒否した。
しかし紅蘭も手をクロスさせて拒否する格好を取る。
「ダメ!! 兵隊にも私がちゃんと外に連れて行くって約束したんだから!! だいたい、ちゃんとやることあるなら内容を言いなよ!! 私も手伝うから」
手伝う、と言われても既都は王様を殺すという目的で侵入したのだ。
手伝ってくれるはずがない。
それ以前に今度こそ捕まってしまう。
紅蘭はその後も既都が城に侵入した理由を聞いてきたが、彼はただはぐらかすだけだった。