時雨謌

□01 朱心-コイゴコロ-
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白雲消え行く飴色空。

火の色のような髪を持つ少年は任務で荒れ果てた村を歩いていた。

彼の名は「時雨」。
【霞】(かすみ)と言う組織のメンバーの1人である。
幼い頃に両親を亡くし、兄がいたと言われていたが、行方不明で、消息すら掴めない。
ただ一つ知っていたのは、兄は幼い頃、父親に虐待を受けていたという事。
それから先の事は時雨は何も知らない。

そして彼は、組織【霞】に入隊し、任務をしながらも兄を探しているのだ。

─荒れ果てた村を歩いて行く。
家や建物は破壊され、人々の死体が無数にある。

恐らく「陽炎」に殺られたのだろう。
「陽炎」とは、悪組織【くも之糸】が造り出した化け物。
殺意だけを持って命令に従い、行動する。

─そして俺は奴等の悪事を止める為に闘う。
それと…兄を見付ける為に。

崩れた家等の近くを歩いて行くと、微かに声が聞こえてきた。
「ぅ……たす…け…て…」 「!!!」
見ると瓦礫(がれき)の下敷になっている俺と同じ年くらいの少女がいた。
俺は急いで瓦礫を除いてやった。

「アンタ、大丈夫か?」
って言っても大丈夫じゃ無さそう。
少女は体のあちこちを打撲していてかなり衰弱していた。
「ぁりがとう…助けてくれて……。」

その声はとても小さく、かすれていた。
「あたし…さっき、外歩いてたら…いきなり黒い化け物みたいなのが襲ってきたの…。それで、目が覚めたら瓦礫の下敷になってて……父さんも母さんもそいつらに……!ぅっ…ゴホッッ!!」
彼女の口から数滴 血がこぼれた。

「おい!しっかりしろ!!あまり喋らない方がいい…。アンタの体はかなり弱ってる。顔も青ざめてるし…体温も低くなってる。とにかく!今直ぐアンタを病院に連れていく。ここに居たらまたアイツ等が襲って来るかも知れねぇからな。」
時雨はそう言うと、彼女を抱きかかえ、急いで歩き出した。

「…なぁ、アンタ…何て名前なんだ?」
「…雫。」
「雫か…俺は時雨ってんだ。【霞】ってゆう組織に入ってて、まぁ簡単に言うと戦士。みてぇなモンかな。」
時雨はニカッと笑って雫に剣を見せた。
「いいなぁ…貴方には居場所があって…。」
「え?…」
彼女はとても寂しそうに泣き出しそうな顔になっていた。
「一体、どうしたんだ?」
そう聞かれて 雫は少し戸惑ったが、雫は全てを彼に話した。
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