短編

□変えられぬ現実と絶対の確信
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昼休み、5限目の移動教室のためにリョーマは少し早めに教室を出ました。
さっきまで居眠りをしていたので、いちいち教室を移動するのをかったるいと思っていましたが、愛しい相手だけは決して見逃しはしませんでした。
リョーマはつい先程にも会いたくて仕方なかった人物を前に、すぐにでも行動を起こそうと駆け寄ります。

リョーマ「部ちょ…」

不二「手塚!」

リョーマより一足早く、不二が手塚を呼び止めます。

不二「手塚のクラス、次の時間音楽?」
手塚「ああ」
不二「そうなんだ。残念だな」
手塚「何故だ?」
不二「手塚の歌、聴きたかったなって」
手塚「何だ?いきなり…」
不二「だって手塚、カラオケに引っ張っていっても全然歌ってくれないじゃない?歌うのうまいのに」

―2年…

2年なんて、すぐ経つじゃん

気にしない

気にならない…

気にしない……わけがない
気にせずにいられない
俺が貴方に会う前から、あの人は…貴方の隣にいたんだよね?
先に気がついたのはどっち?
先に声をかけたのは?
一緒にいるのって、当たり前になっちゃってるの?

“たった2年”のはずなのに…
深く考えてしまう
考えた分だけ、重たくなっていく…
ねぇ
2年間の間に、何があったの?
俺のいない2年間を…あの人とはどう過ごしてきたの?
どんな人に会った?
どんなことしてた?
全部…知らないんだ

貴方とあの人が親しくなっている間、俺と貴方はお互いの存在さえ知らないまま存在していたんだね
どうしようもないんだろうけどさ…俺がまだ貴方を知らなかった間も、あの人とは親しくなっていたんだよね

がんばれば、出会えた?
努力すれば、気づけたのかな?

多分……無理だ

リョーマはそのまま、踵を返しました。
そして、居心地の悪い雰囲気になったリョーマの傍には、堀尾達でも近付く事は難しかったのでした。

リョーマ「部長、部活終わった後、付き合ってもらいたいんスけど?」
手塚「構わないが、部誌を書かなければいけないから他の者より遅くなるぞ?」
リョーマ「いいっスよ?部室ででもいいことなんで」
手塚「そうか。なら、部活が終わったら少し残っていてくれ」
リョーマ「ウィース」

リョーマは一安心しましたが、不二に感づかれてはいけないと思い、部活が終わるとわざと遅れて、最後に部室に入りました。

不二「手塚、部誌書いてから帰るんでしょう?待ってるから、一緒に帰ろう」

リョーマは思わず手塚の方を振り向きました。
ですが、手塚は特にこれといった違いもなく、冷静な口調で言いました。

手塚「すまない。今日は少し残らなければならないんだ。どのくらいかかるか分からないから、待ってなくていい」
不二「そう?」
手塚「ああ。ここのところいつも待たせてしまっているからな。今日くらいは先に帰ってくれ」
不二「別にいいのに…」
手塚「俺としても、毎日付き合わせて遅くまで残ってもらうのは気が退ける」
不二「分かった。手塚がそう言ってくれるんなら、今日は帰るよ。その代わり、明日は一緒に帰ろうね?」

リョーマは何故自分のことを言わなかったのか気になりましたが、邪魔が入らないのであれば何でもいいと思い深くは考えませんでした。

手塚「越前、話とは何だ?」

手塚は皆が帰った後、早速と言わんばかりにリョーマに聞き返します。

リョーマ「部誌(それ)、書かなくていいんスか?」
手塚「部誌は書くが、まずはお前からだ」
リョーマ「先に書いてていいっスよ?」
手塚「そうはいかない。用事があるのに部活が終わるまで待たせてしまったからな」

手塚の生真面目さは、さすがのリョーマでも尊敬に値しました。

リョーマ「俺が先でいいんスか?」
手塚「ああ。遅くまで待たせるのも悪いし…今日のお前は、何だか様子がおかしかったからな」

リョーマは驚きを隠せませんでした。
リョーマ本人でさえ認めたくなくて、背を向け続けていた気持ちでしたが、手塚はそんなリョーマの異変にとっくに気付いていたのです。
リョーマは、見抜かれたのが手塚でなければとどれ程考えたでしょう。まだ経験が浅く、何事にも臨んでいく怖いもの知らずのリョーマでしたが、彼にはまだ、この気持ちを整理する術が分からないのです。

リョーマ「…部長」

リョーマは手塚の腕を引くと、バランスを崩し前屈みになった手塚の唇に口づけました。

手塚「んっ…!//ふっ……やっ…//」

リョーマは手塚に押し退けられそうになるも、更に強引に舌を入れると、面白いように手塚の手から力が抜けていきました。

手塚「んんっ…//んっ……ふぁ……//えち…ぜ…//」

リョーマに口内を犯され、手塚は身体が熱を帯びていくのが分かりました。
歯列をたどり、舌を絡め、何度も何度も、しつこいくらい口づけます。
解放された時には、呼吸は定まっておらず、残った熱だけが未だに手塚の身体を犯しているようでした。

リョーマ「部長ってさ、見せかけるの得意だよね?今だって、隙がないって見せかけておいて、あっさり俺にキスされてんだもん。まだまだだね。ところでさ…部長、キスするのって今のが初めて?随分下手だったけど」
手塚「なっ…!?//」
リョーマ「だったら嬉しいけどさ、あんまり隙があり過ぎても困るんだよね。俺にとって好都合ってことは、他の人にとっても同じってことでしょ?それじゃあ何時誰に襲われるか分かんないじゃん。あんな先輩達に囲まれててよく今まで何事もなかったよね。まぁ、もう俺以外の奴に触れさせたりしないけど」
手塚「……//」
リョーマ「キスだけでこんなになっちゃってたらきりがないよ?俺も、まさか日本に来て部長みたいなのに出会えるなんて思ってなかったからさ。…こんなことなら実践練習しとくんだったよ」

そう言いながら、リョーマは手塚の着ている制服のボタンを外し始めます。

手塚「お前っ…//」
リョーマ「でもね部長、俺…部長が初めての相手って嬉しいっスよ。本当なら、練習積んで部長への負担を減らしたいところなんだけど…それよりも、一番最初に抱くのが手塚部長なんて、最高だね。すっごい興奮する」
手塚「……」
リョーマ「ねぇ、部長は?……部長は、俺が初めて?」
手塚「なっ、何を…//」
リョーマ「もう誰かに抱かれたの?たった一度でも、誰かのものになったことがあるの?もしそうなら、俺が何回部長を抱いても、俺のものにはならないの?」
手塚「越前…」
リョーマ「俺以外の、誰が部長の唇に触れたの?…不二先輩?それとも……」
手塚「……」
リョーマ「ねぇ…答えてよ…」(お願いだから…)
    「部長…?」(その綺麗な瞳で、俺以外を見ないで……)

リョーマが何も言わなくなった時、手塚が重い口を開きました。

手塚「こんなこと…お前が初めてだ//」
リョーマ「え…?」
手塚「第一、まだ…人と付き合ったこともないんだぞ?//」
リョーマ「嘘…部長……まだ未経験…?」
手塚「越前っ!//」

手塚は声を張り上げました。

リョーマ「あははっ…何だ、そうだったんスか。…じゃあさ……いいよね?」
手塚「?」

手塚は疑問符を浮かべていると、リョーマはさっきまで止まっていた手を動かし始めました。

手塚「え、越前っ…//」
リョーマ「ここまでその気にさせといて、駄目とか嫌なんて言わないで下さいよ?ご馳走目の前にお預け喰らった後の狼は、飢えてるだけの時より怖いんスから」
手塚「お前は…っ//」

俺は貴方に会うまで、こんな気持ちさえ知らなかったんだよ?
がんばり方も、努力の仕方も…
全部、貴方に教わった
貴方に会ってから、気づいた

でも、もし……

もし、
年齢とか、
環境とか、
今と全然状況が変わっていて、俺と貴方にテニスがなかったとしても…

それでもさ、
俺達は出会って、
俺は貴方に恋をするよ

絶対に
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