短編

□皆がライバル!?
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リョーマは授業が終わると、少し早足で部室に向かいました。

退屈なだけのつまらない時間から開放され、ようやくテニスに打ち込めるのです。

よく考えてみれば、リョーマの家にはテニスの相手が居て、ちゃんとテニスコートもあるので、何も急いで行かなくても家に帰った後だって打とうと思えば打てるのです。

リョーマが急ぐのには他の理由がありました。
ほんの少し前までは、テニスをする事が目的で入った部活でしたが、今ではその目的は、単なる“いざという時にごまかす為の口実”になっていました。

その理由は、リョーマは最近、テニス以上に夢中になっているものがあるのです。

―ガチャ

リョーマ「っあれ?…部長?」

部屋にいたのはお目当ての人物ではなく、青学No.2の天才・不二周助でした。

不二「やあ、越前」
リョーマ「不二先輩…」
不二「手塚なら、今日は生徒会があるから遅れるよ」
リョーマ「そうっスか」

リョーマは素っ気なく言い放ちますが、不二の目は既にリョーマの心中を悟っていました。

不二「残念だったね。越前は一年だから、部活くらいで挨拶するくらいしか手塚と話せる事はないのに…」
リョーマ「別に。時間なんて、これから取り返していくっスよ」

不二の嫌味に対して、リョーマは自身あり気に余裕たっぷりの笑みを浮かべます。

不二「何か策があるようだけど、そう簡単に事はうまく運ばせないよ?」

菊丸「あっれ〜?不二とおチビ、部室で何やってんの?」

菊丸は、ついさっき部室に入って来て全く着替えようとする様子がない2人を見て会話に参加します。

不二「ああ、英二。別にたいした事じゃないよ。ちょっと越前と、どっちが手塚に相応しいかって話してただけ」
菊丸「にゃーんだ、そんなの簡単じゃん!俺でしょ」
不二「英二、冗談は顔だけにしてくれないかな?」

表情は相変わらず笑顔のままでしたが、明らかにライバルにたいする敵視を声色に表します。
不二本人は気づいていない事でしょう。

リョーマ「本当、思い込みが激しい人ばっかり。部長もこんな人達に付きまとわれて、今まで大変だったんだろうね」
海堂「てめぇも人の事言えねぇだろうが」

一部の会話を聞いていた他のレギュラー達も、黙っていられず口を挟みます。

桃城「何だ何だぁ?越前も部長狙いだったのかよ?めんどくせーな、めんどくせーよ」
乾「越前だけじゃない。俺のデータでは、青学にはもうほとんどの奴が手塚に目をつけているようだ。それこそ男も女も、後輩も…高等部の先輩もね」
不二「先生だって油断はできないよ?立場を利用して手塚と2人きりになるなんて簡単だからね」
大石「こりゃ大変。…でも、いくらここにいる全員が手塚を好きだからって、そこまで敵視しなくてもいいんじゃないか?」
跡部「甘いな」
忍足「自分ら手塚の事好きなんが他校にもぎょうさんおるっちゅう事を知らんのかいな?」
宍戸「激ダサだな」
日吉「青学は、やっぱり跡部さんが言ってた通り全員手塚さん狙い…下克上だ」
鳳「手塚さん居ないんですか?」
宍戸「せっかく自主トレの間に青学まで来たのによ」
リョーマ「ていうかさ、何でアンタ達がここにいんの?」
大石「こ、こらっ!部外者の立ち入りは禁止だぞ!」
忍足「固い事言うなや。自分らは学校同じやさかい、毎日手塚の顔おがめるけん別に構わへんやろうけどな」
日吉「俺達は学校が違うので、自分で時間を作って会いに来るしかないんです」
跡部「俺様は部外者じゃねぇ。手塚の恋人、つまり手塚の関係者だ」
不二「何時手塚が君の恋人になったのかな?」
リョーマ「勝手な事言わないでくれる?俺の部長がアンタみたいなの相手にする訳ないんだからさ」
跡部「言うじゃねぇの?何なら、今ここで決着つけてもいいんだぜ?アーン?」

裕太「すみませーん…げっ、兄貴っ」
不二「裕太」
リョーマ「わざわざ兄貴に会いに来たの?暇なんだねルドルフって」
裕太「兄貴にじゃねぇよ、手塚さんに会いに来たんだ!」
桃城「部長に?」
海堂「またかよ」
佐伯「あれ?何だか随分賑やかだね、青学テニス部の部室って。さしずめ、目的は皆同じかな?」
乾「六角中の佐伯まで…理屈じゃないっ」

切原「手塚さーん!うわっ、何なんスかこの人達!?」
仁王「やかましい所じゃのぅ。もう少し気を遣わんといかんぜよ」
丸井「外まで声が筒抜けだぜぃ?」

不二「もしかして…全員が手塚目当てなの?」
佐伯「こりゃ、一瞬たりとも気を抜けないな」

こうして、部室はこうなった現況…もとい、手塚部長の“グランド20周!”(お約束)が出るまで、言い争いが続いたそうでした。

Fin.

※オマケ※
白石「…大集合やな。入るとこあらへん」
遠山「でも白石―、何やおもろそうやで〜」
白石「せやな…勝ったもん勝ちや(妖笑)」
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