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過去においていたものは小説ページに置いてあります。
9/30ちょこっとだけ更新。

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オバケと…。

深夜。
闇夜を惑うことなくこちらへ近づいてくる気配を感じ、眠っている昶を残し、白銀は壁をすり抜けて外へ出る。
そのまま気配のある城の頂上付近へと上がれば、一羽の蝙蝠が人の姿へと変幻するところを目にする。

蝙蝠族。
蝙蝠と人の姿を自在にとる夜の眷属。

どうやら、洸の行動は早かったらしい。
そして、その相手も...。
時間を考えて、おそらく、連絡を受けてその日のうちに来たのだろう。

その蝙蝠、否、男はこちらを見、わずかに笑みを浮かべる。

「やはり貴方でしたか。白銀と聞き、まさかとは思いましたが...」

この言葉でこの男と自分が関わりがあることは確かな情報に変わる。
思い出したこと、今ある記憶、それがどこまで正しく、そして使えるのかは正確に捉えなければならない。

『澤木、であっていますか?蝙蝠族なら』
「はい。事情は洸から聞きました。貴方は余程数奇な人生を送っているようですね」
『好きでそうしているわけじゃありませんよ』
「知っています」

会話が途切れれば、それが合図になったように、一瞬で場の空気が変わる。
冷たく、否をいわせぬ威圧感。

『…澤木、ワタシのお願い、聞いてくれますよね?』

「はい」

そこで来訪者は恭しく礼をした。



再び、澤木が蝙蝠となり立ち去った後、闇から現れるように劉黒が姿を現す。
開かれた両の目が闇に反する様に赤々として見える。

「客人は何と?」
『何のことですか?』
「白銀、お前がこの城の状況を把握できるように、私もまた、同じことが可能だ。
ここは私の領域だからな」
『そうでしたね...。今はまだ、確証がないので話せません』
「そうか、では、お前が話してくれる日を待とう」

『…ありがとうございます』

偽りだらけの自分を信じてくれて...。








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