頂き物

□『猫のお留守番』 守花サマより。
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猫のお留守番



白銀が仕事で一日家を空けることになり、出張に行っている間、昶は洸の家に預けられることになった。

昶を預ける際の白銀の様子は、それはそれは欝陶しいこと。
洸の家に着いて、お出かけゲージから昶を腕の中に納めては時間ギリギリまで離さない。

「にゃー!」
「白銀、時間大丈夫なわけ?それにアキ嫌がってるぞ…」
「ワタシも昶君と離れるなんて嫌ですよ!でも慣れない場所に連れていくのも可哀相ですし、少し距離を置くことが二人の愛を深める事になるなら、ワタシ、乗り越えてみせます!」
「いや、アキが嫌がってるのはそこじゃなくて…」
「昶君!ワタシにいってらっしゃいのキスを!」
「にゃうッ!」
「ダメだ、聞いてない」

洸は呆れたとため息をついてしばし一人と一匹を観察してみる。

昶に迫る白銀の顔に、猫パンチが繰り出された…。



「にゃーにゃー!」
「にゃうッ!」
「にー…」

ようやく白銀を送り出し(僅かに顎の辺りが赤くなっていた)、これで静かに昼寝が出来ると思っていた昶の期待は裏切られる。
一匹の茶トラの子猫によって。

先程から昶に纏わり付いてくる茶トラの子猫は、洸が飼っている猫だ。
名前は賢吾。
昶が大好きである。
遊んで欲しくてじゃれついてみるが、昶に一喝され耳がひゅんとうなだれる。

そんな賢吾などお構いなしに昼寝をしようとする昶だが、数分もすればまた賢吾がじゃれついてくるので昼寝を諦めるしかないのだった。



「ただいま〜」
「にゃん!」
「にゃー!」
「あらら…」

昼から仕事に出ていた洸が帰って来て初めに見たのは、取っ組み合いをしている二匹の子猫。
喧嘩、ではない。
狩りの練習を含んだ本能的な遊び。

「二匹共怪我するなよー、特にアキ、お前が怪我したら白銀が煩いんだから。ほらほら、ご飯にしようなー」

言いながら賢吾を抱き上げる。
どちらかと言うと賢吾が昶から離れないから、延々と遊びが続いていた訳だ。
それを分かっている洸は賢吾を昶から離し、ご飯に意識を向けさせた。



夜。
いつもなら遊び疲れて寝ているはずの昶が起きている。
賢吾は自分のご主人様の膝の上で夢の中。

「アキ、寝ないの?珍しいね」

ケンはぐっすりなのにと優しく寝ている子猫を撫でる。

「白銀がいなくて寂しい?」
「……」
「あいつなら明日朝一で駆け込んでくると思うよ」
「……にー」

別にそんなんじゃないと言いたげに一声鳴いて、昶も洸の膝上に。

「おやすみアキ」

温かいけど違う匂いに少し寂しいと思った昶だったが、遊んだ疲れからすぐに眠ってしまった。

早く明日になれと願いながら。





「昶君会いたかったです!もう離しませんからね!」
「にゃーッ!」
「だから白銀、アキ嫌がってるって」

洸の予想通り朝早くに昶を迎えに来た白銀。
一度家に戻らず、まっすぐ洸の家にきたようだ。

「昶君、ワタシがいなくて寂しかったですか?ワタシはすっごく寂しかったんですよ〜」

小さな子猫を大切に抱きしめる腕は優しい。
安心する体温と匂いに、昶も少しだけならと、白銀に擦り寄った。



大好きなご主人様。
やっぱり一緒にいたいんだ。


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