頂き物

□『ひとり』 宮野あみんサマより。
1ページ/2ページ









賢吾と一緒にいるようになってからは近くの河原にこうして一人でサボに来るなんて久しぶりだった。

本当にこいつさえ居なければの話だけども……。









「白銀、ちょっと離れろ」

「嫌です。ワタシは死んでも昶くんから離れません!」



……呆れた。さっきから何度同じような言い合いをしているんだろうか。俺にだって一人になりたい時とか考えたい事とかはある。

なのに白銀は俺の事も考えずにベタベタと……出会ってからは、たとえ数時間でさえも離れた事なんて数える程しかない、と思う。



仕舞いには道ばたで「今日の昶くんいつもよりも可愛い!……いつも可愛いですけど」とか何とか言って抱き着いてくる始末。

お前は人に見えないから別にいいんだろうけども、見えてる俺は1人で歩きづらそうにするなんて気持ち悪いだろ。端から見たらどう見えるのか聞きたい。

……周りにいる奴等はまともな感性が無いから聞いても意味がないけど。つか、それ以前にその姿を誰も気付いていないと思う。











ふう、と小さく息を吐いて空を見上げる。独特な草の匂いと眩しいくらいの太陽を見るのが好きだった。独りで。

でもいつからだろう。俺の事を後ろから賢吾が追い掛けてきて、迷った時には綾が背中を押してくれてそれから、当たり前のように近くに白銀がいて……気が付けばたくさんの人が周りにいた。



以前は独りで味わっていたこの時間も白銀と共有してるなんて、少しだけ恥ずかしくて少しだけ嬉しい。







「昶くん、ワタシに離れてもらいたいですか?」

唐突に今更な質問が返ってくる。直ぐに遅いだろ、と返そうと思った。でもそんな傷付いた顔されたらこんな答え返せないだろ。……きっと白銀も独りの苦痛を知っているはずだから。



「1人にはなりたいけど、独りにはなりたくない」



寝転びながら隣を見るとあの空より綺麗な蒼い瞳が困っていた。







この言葉の意味が分からなくてもいいんだ、白銀。だってこれからは独りになる事なんてないから。俺も、お前も。














平凡な、しあわせ





次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ