頂き物

□『約束に誓い』 中川淕サマより。
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今日は母さんがせわしなく動いている。
まだ正午も過ぎていないのに、家の仕事は全て終わった。









「あとはコレを片して…」
「なァ母さん。今日なんかあるのか?」
「え?何ですか?」
「なんかあるのって」
「あっ、はい。今日は劉黒が来るんですよ」
「劉黒、が…?」
劉黒…母さんの一番の親友らしい人。
俺もその人の事はよくわからないけど、昔から母さんといつも一緒にいたらしい。
けれど、最近はお互い忙しくなり、会える日が中々ないんだとか。
「彼と会うのは何ヶ月ぶりでしょうか?」
「あんまり楽しそうにしてると父さんが怒るぞ」
「洸は関係ありませんよ。それに劉黒は洸とも仲が良いですから」
心なしか張り切っている母さんが本当に楽しそうで、滅多に見る事のない表情ばかり。
「昶君、暇ならそこのテーブル片して下さい」
「めんどくさい」
「お願いしますよー」
「…わかったよ」
「ありがとうございます」
母さんに頼まれると何故か断れず、手渡されたふきんでテーブルの汚れを落としていく。
汚れといっても母さんが毎日掃除しているので目に見えるものは何もない。
「終わった。じゃ俺外出てるから」
「あ、ダメですよ!今日は家にいて下さい。劉黒が会いたがってましたよ」
「はっ?」
劉黒が俺に会いたがっている?
何で。
別に俺じゃなくて賢吾が相手すりゃいいじゃん。
「とにかく!家にいて下さいね」
結局、母さんに念を押されて反論出来なかった。










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