◎種TEXT◎

□僕は貴方を…2
1ページ/2ページ






…僕は貴方を…





僕は、貴方を…お慕いしています。





良き理解者として、
良き友人として、
良き家族として、





そして、





僕の、大切な「恋人」として、…




















…そんな事を云うと、又貴方は、顔を朱に染めて、『大人を揶うものじゃないよ』何て云って怒るのかも知れませんね…。

でも、それは誤解です。全然揶ってなんていないですし、僕はそれこそ全力で本気なのに、貴方の方こそ僕の本気を全く解ってくれないじゃないですか。

それって、良き保護者は失格なんじゃないですか?

…ねえ、ギル?

ギルはどう思いますか…?





ギルは、

僕をまだ子供だからと少しばかり侮ってはいませんか?

あの時の僕の行動は、一時の気の迷いなどではないのですよ…?
これからが本番なのです、これから攻めますよ、と云う宣戦布告なのですよ?
…きっとギルの事だから全然解っていないのでしょうけどね。

でも、大丈夫です。

僕がこれからちゃんとギルにも解る様に、ゆっくりと丁寧に教えてあげますから。

楽しみにしていて下さいね…?







ギル…?





 

『議長、少し時間宜しいでしょうか?内密でお話したい事が有るのですが、二人だけで…』

僕がそう口にすると、ギルは、ほんの少しだけ困った様な顔をする様になった。
…何故なのかは解っている。





…そう、あの時からだ。





『レ…レイ、どうしても二人きりじゃないと駄目かい…?』

『ええ、議長。とても大事な事なので人の居る場所ではちょっと…』

『そ、そうかい?困ったね…』

本当に困っている様で、ギルは何とか僕と二人きりになるのを阻もうとしているみたいだった。

非道いよ…ギル。

そんなに僕と二人きりになるのが嫌なの?

と、云うよりも、きっとあの時みたいになるのが、怖いんだよね…?

御免なさいギル、…でも僕は止められないし、もう、止まらないんです。
もう、貴方の子供なだけじゃ満足出来ないんです。僕はもう、甘やかされて可愛がられているだけじゃ駄目なんです。





僕は、貴方が…





『…解りました議長。それでは、此処でお話させて頂いても宜しいのですね?』

含みを持たせる口調で、目を見つめ乍らギルに詰め寄る。

『………?』

『本当に、此処でお話させて頂いても、宜しいのですね?二言は有りませんね議長…?』

もう一度念を押す様に周りをチラリと見渡し、ゆっくりギルを見やると、ギルは漸く理解したのか慌てた様に僕の言葉を遮る。

『解ったレイ。後で私の部屋へ来ると良い…』









…これは、ギルへの脅しだ。
…これは、ギルを裏切る行為だ。
…これは、ギルを失望させてしまう。

…こんな事をしてはいけない…。










…そんな事を思っても、僕はもう、矢張り止まる事など出来なかったし、そして止まろうとも思わなかった。

僕は、自分が子供の頃と比べて、無垢で綺麗だった純粋な部分が随分と汚れてしまった様に思った。






その日の夜、再び僕はギルの部屋に向かう。ギルはきっと僕に随分と落胆している事だろう。あんな風に脅した僕をきっと許さないだろう。





…だけど、





それでも、





僕は貴方が…





『議長、レイ・ザ・バレルです』

『ああ、レイか。…入りたまえ』

部屋の中からギルの声が聞こえる。
「失礼します」と云って入った部屋で、ギルは真正面のソファーに座って僕を待ち受けていた。

そして、僕と目が合うと気まずそうに視線を逸らし、何処かぎこちない動きで僕を向かいの席に座る様促す。
…明らかに僕を警戒している。

『で、大事な話とは何だい?』

その表情は硬く、緊張でもしている様に焦りや狼狽の色が窺える。
そして何時もなら、多少の雑談をして落ち着いたら本題に入るのに、直ぐに本題に入ろうとするなんて…。
…矢張りさっさと用事を済ませて僕をこの部屋から追い出そうとしているのですね、ギル…。

自分が招いた結果とはいえ、多少なりのショックが僕を襲う。

…胸が痛む。

でも、僕はもう諦められないんです。



『ギル…、僕の気持ちにはもう気付いたでしょう?』

『レ…、レイ…?』

『…そんな顔をしないで下さいギル…』



僕はギルの顔に戸惑いと困惑の色が浮かんだのを見て取って、矢張り悲しくなってしまう。



『いや、そんな…』

『…お願いです』

『……』

『ギルのそんな顔が見たくて云ったんじゃ…ないんです』



あ。

駄目だ…。



予想以上にショックが大きく、目が潤んでゆくのを止められない。僕は思わず泣き出してしまいそうになるのを必死に堪える。

 
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ