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□黒猫リボン
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クリスマスには、プレゼントを交換し
バレンタインには、チョコレートを渡し
ホワイトデーには、キャンディーを貰い

なのに
ハロウィンだけがなにも無しというのはおかしい。
所詮「恋の3大イベント」なんてものは
企業の陰謀だとは理解しているけど。

それでも、楽しいのだから一向に構わない。
寧ろ大歓迎だね。

それなのに、秋に君臨する唯一のイベントである
この「お化けカボチャ祭り」の扱いの酷いことといったらない。
「イベントは大いに楽しむためにある。」
とは、どこぞのキャラクターが言いそうなセリフだが、全く同感だね。
大真面目にはしゃぐためにあるのだ。

特にこのイベントは。




「危ないから」


コーラがグラスの3分の1あたりまで減ったあたりで
漸くごたまが言葉を発した。
お行儀悪くストローを噛みながら、続きを待つ。
はやくしてよ、とは言わずにおとなしくしているのが良いお兄さんの証である。
僕ってば偉いじゃないか。
素敵なお兄さんの見本にはもってこいだろう。


「人間になるから、危ない」


そうして、ようやっと心を落ち着かせていた僕に
素敵な一言がお見舞いされた。
実にごたまらしいというべきか。

まあね、予想はしていたんだ。
なにせ既に1年以上付き合いがあるわけだ。
慣れもするさ。


「人間になるんだー?」


ノリ突っ込みは駄目だぞ、ぺこたす。
と、自分に言い聞かせて
どうにか疑問系の形を保ったまま口を閉じる。
この場にインザーギが居たならば
十中八九、耐え切れずになにかしら突っ込みをいれるのだろうけどね。
僕はギ様ほど芸人気質ではないから
少しの違和感をなんとかやり過ごすのだ。


「黒猫だから」


簡潔だからこそ、こちらも言葉を選ぶ必要がある。
普段はそうしているんだ。
僕だって慎重なんだ。
けれども、今回ばかりは思ったままを口に出させて欲しい。


「なにそれ擬人化?」

「ちょっと違う。ちょっと、似てるけど。」


ごたまは別段気を悪くした様子もなく、擬人化。と反芻してから
あらためて首を横に振る。

なんだよ。
猫が人間になるって、一般的に擬人化っていうんだよ。


*
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