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□ジェラシィ
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玄関の前に立って、僕は電話越し、君に到着をつげる。

9秒たってから、ドアのチェーンが外された、音がした。





*ジェラシィ*





『いらっしゃい。』

「おじゃまします。」



目の前でそう形を作ったケンゾの唇。
僕の耳元から聞こえるケンゾの声。


電話を閉じて、僕は返事をした。






「外はね、暑いよ。もう、いらいらするくらいに。」



「アイスいる? 冷蔵庫にあるから。」





食べていいよ。とこちらを振り向きもしなかった。
いらいらする、と、言っているのに。

気付いていないんだろうか、僕の言葉の意味に。






「冷凍庫、でしょ?冷蔵庫に入ってたらとっくに溶けちゃってるよ。」






この位置からは良く見えないけれど、ベットに寝転がっている彼の表情。
きっと、幸せそうに微笑んでいるんだろう。

僕はアイスのビニールの包みを、わざと、ビンと缶しか入っていないゴミ袋に突っ込んだ。





ソーダ味のアイスのバーを咥えたまま、彼の居る部屋に戻った。

何の断りも無く端に腰掛ければ、それを責めるかのようにギシリと音を立てる、安いつくりの簡易ベット。

傍に転がされていた紫色をしたクッションを引き寄せ、隠れるようにしながらちらりとケンゾを見た。




*
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