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□マシュマロビターパンプキン
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「どうしてハロウィンにはカボチャなんだろね」


涼平は、床に転がっているゾンビの頭部を一瞥すると
ボウルに盛られているクッキーの一つをつまみあげて当たり前のように口にくわえた。


「カボチャが豊作過ぎて困るからじゃない?」


既製品のチョコレートシフォンケーキを、ホイップクリームで飾りつつ答えてやる。
絞るだけのクリームやマーブルチョコレートやらを使い
慣れないながらも頑張ってみる。
コツさえ掴めば、まあそれなりに出来ないこともない。


「それって、微妙に違うと思うけど。」


ちゃっかりとテーブルにつきながら、くすくすと涼平は笑う。
少しは手伝えばいいものを、と、内心毒づきながらも作業をこなす俺は偉いと思うね。
大体、涼平に料理ができるのか怪しいし。
俺が一人でやったほうが、効率がよさそうなんだ。正直。

以前、家での食事について聞いたら返ってきた「昔レストランでバイトしてたから」という意外な答えには確かに驚いた。
しかし、それが料理をするという事とイコールで結べるのか、と聞かれれば、わからない。
そう言ってやったら、心外だというように何か言い返してきたけれども
その割に彼のキッチンには生活感が感じられないのである。
基本的にヤカンしか必要のない食生活を送っているのだろう。

俺は涼平を盗み見て、スーパーで買ってきたカップケーキを
飴とマシュマロと一緒に袋に詰めた。


「ところで、インザーギは仮装どうするの?」


またひとつ、無駄にクッキーを消費しながら、白い羽根のはえた天使サマは尋ねる。
家に来るなり着替えを始めたときには正直驚いたが、出来上がったのは白いフリルブラウスにチュチュをあわせて、髪を緩く巻いた天使らしき仮装をした涼平だった。
とは言っても、まだ頭の“輪”がないので、不完全ではあるのだが。


「どうしましょうねー」


悪さをする天使サマの右手をぺちんと叩き、しつけてやる。
つまみぐいは、いけません。


*
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