お話

□拍手文
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毒林檎





「なぁ、これ喰っていいのか?」


ゾロが指差したのはテーブルの上にある、たった一つの真っ赤な林檎。

一つしかないそれはとても輝いて見えて美味しそうだった。

本当は寝る前に酒を一本拝借するつもりだったのだが気が変わった。

この真っ赤な林檎が食べたい。


「んー・・・喰うのはいいが」

「なんだ?」

「それ、毒林檎だぜ?」


暫しの沈黙。

いつもと特に変わった様子もないこの船のコック、サンジ。

ゾロの方を見るでもなく、せっせとレシピを書き込んでいる。

そのいつも通りともいえる光景からは想像もつかない爆弾発言。


「毒林檎だぁ!?」

「そ、一口食べると永遠の眠りについちゃう毒林檎」


レシピを書き込むことを一時中断してゾロを見る。

その顔は満面の笑み。


「さぁ、どうする?白雪姫さん?」

「・・・・・・シャリッ」

「!?」


何の躊躇もなく林檎を齧るゾロ。

シャクシャクと咀嚼して半分ほど食べ終えると。


「なんだ、普通の林檎じゃねぇか」

「お前なぁ…少しくらいは警戒しろよ…」


はぁ、と脱力して溜息を吐く。

恋人とは言え、その豪快振りには目を見張る。

もう少し可愛げがあったっていいものを…


「その必要はねぇ」

「あぁ!?あー…毒なんか大剣豪を前にしちゃ恐るるに足らずってかぁ!?」


卑屈めいてそう言えば。


「お前が言ったんだろ、白雪姫ってよ」

「は?」

「俺が眠りについてもお前が起こすから心配ねぇ」

「なっっっっ!?」

「ごっそさん、残りはお前にやるよ、王子様?」


勝ち誇ったような小憎たらしい笑みを浮かべながら、半分だけ残った林檎をテーブルに置いてラウンジを出て行ってしまった。

入れ替わるように入ってきたチョッパー。


「サンジ、ホットミルクが飲みたいんだけど…ってあれ?…あれれれ…???」


毒林檎よりも刺激的で。

魅惑的な。

俺の恋人。



(あいつが白雪姫知ってんなんて詐欺だろ!!!!!!)



「サンジ林檎みてぇに真っ赤だぞ?熱でもあんのか?」

「ないっ!!!!!」












END
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