silver

光風
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「た〜か〜す〜ぎぃ〜」


腹から思い切り大きな声を出して、二階の部屋に届くように語りかける。


すると、寝起きのようなぼーっとした人が一人。

「…あぁ…?辰馬かよ。何の用だ」
「何の用って、花見じゃ♪約束したろ―?」
「したような、してないような…」
「まぁ、いっか。さっさと行くぜよ〜」


と、強引に高杉は連れて行かれた。






「辰馬」
「なんじゃ?」
「これが桜か?」
「いいじゃろ〜。綺麗でし。ピンクだし〜。」
「良くねェ!これはアンズだろぉが!!」
「でも…高杉と見たかったんじゃ〜」
「ハァ……そうかよ」

ちょっと呆れ気味に溜め息をついて、レジャーシートの上に腰を下ろし、頭上のアンズを見上げる。
辰馬の言うとおり、綺麗と言ったら綺麗だ。
桜とはまた違う儚さを持っている。

「高杉」
「…あ?」
「花びらいっぱい付いとるよ?」
「…悪い…!」

ふと、花びらを取ろうと触れた辰馬の指が頬に当たった。
それだけの事にビクッと反応してしまった。

「高杉…」
「何でもねぇよ!」
「可愛いのぅ」
「な……んっ」

いきなり、唇で口を塞がれた。
真っ昼間に野外で。
誰か見ていたらどうするんだろう。

まぁいいか。
なんてまた流される。

だけど、来年は桜を見せてくれよ?

そう言えるのは、きっとこの長いキスが終わってから。
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