silver

相愛
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最近、辰馬は帰って来るのが遅い。
同僚のヅラに聞いてみたが、残業はしていなくて、7時には会社を出ているらしい。

それなのに。

昨日は夜中の2時に玄関が開く音がした。
出迎えなんかしてやらない。

帰りが遅くなり始めの時は、毎日出迎えに行っていた。
「なんでこんなに遅せぇんだよ、残業?」
と聞くと、
「ん―…まぁそんなもんじゃ」
なんて答えられた。

なんで辰馬は、何も言わないんだろう。
言ってくれれば、こんなに不安になる事はないのに。


そんな事を考えていると電話がかかって来た。

勿論、辰馬から。

「もしもし!!」
「お〜〜晋、元気いいのぉ」
これから辰馬が話す内容はわかってるが、嬉しくてつい、勢いよく電話に出てしまう。

「晋、わし、また今日も帰り遅くなるんじゃが……」
「…わかった。じゃあな」
「いや、あの、晋」

ブチッ



切っちまった。


辰馬が何か言おうとしてた気がするが、最近本当に寂しかったんだ。
少しくらい冷たくしたって、罰は当たらないだろう。
そう思い込む事にした。



時計の針が、夜中の3時を告げる。

「…遅い…」

あの後、結局気になって起きてしまっていた。
遅くなるとは聞いたが、こんなに遅くなるとは聞いてねぇぞ馬鹿辰馬。

でも、もしかしたら

「俺、飽きられたとか…?」

ポロリと口に出した途端、すごく怖くなった。
男女でも、結婚してから不仲になる事も多いらしいし、ましてや俺達は男同士だ。
やっぱり女がいいとかあるかもしれない。

今も、浮気とかしてたらどうしよう。
そう、不安になってしまうのだ。
 


そんな事を考えていたら胸が苦しくなってきた。
浮気してるって決まった訳じゃないのに、辰馬が他の女を抱いている映像が頭の隅に浮かぶ。

「…っ」

ぼろぼろ涙が零れてきてしまい、椅子の上で体育座りをして泣いてしまう。

子供のように声をあげたい気分だが、情けない気がするので頑張って声を堪えて泣く。





そのままずっと泣いていると、玄関から音が聞こえた。
辰馬が帰ってきたのだろう。

「……晋助!?どうしたんじゃ!」

静かにリビングに入ってきた辰馬は、泣いている俺を見て慌てて抱き付いてきた。

「なんでもねぇよ」

鼻を啜りながら答えると理由がわかったらしい辰馬は「ごめん…晋助、ごめん…」と謝ってくる。
辰馬の頭が触れてる肩が湿っぽい。

「馬鹿…お前まで泣いてどうすんだよ」
頭を撫でながらそう言ってやると、
「じゃって…わし、晋助泣かしてしもうた……最低じゃ…」

ぎゅっといたわるように俺を抱きしめて、この世の終わりみたいな悲しい声で呟く。




 
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