silver

貴方が居るから
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帰りのHR中、暇だったので隣りの席の奴と話をしていた。

「坂本ってさ、一生悩まなさそうだよな」
「そんな事ないぜよ〜」

昔から言われてるその言葉。
金持ちだからとか、直接言わないけど。
その度自分はいつものように笑って「そんな事ない」と言っていた。

「んな事言って〜悩みなさそうじゃん」

いいよなぁ〜と小突かれながら、顔が引きつっていくのが分かる。

「あはははは…」

金持ちだからって、悩みがない訳がない。
昔はそんなになかったが。
自分ではなくて、自分の親が金持ちなだけだ。
その恩恵をうけているのは自分。

それでも、悩まない人間がいるわけがない。スーパーマンだって、きっと悩む時代だ。
多分。


とりあえず笑ってると、ごつっと後頭部を叩かれた。

「だっ…痛いの〜」

「遅せぇよ。辰馬」

後ろを振り向くと、あぁ やっぱり彼だ。
二つ隣りのクラスの高杉晋助。
同じ様に自分を叩くあと二人とは違って、力が加減してあって大して痛くない。

いつも自分が高杉のクラスに迎えに行くのだが、彼が迎えに来るくらい時間が経ったのだろう。


それにしても、いつの間にHRは
たのだろう。


先生も、これだけ大声であはは〜と笑っているのに、何故注意しない。
気付かなかったのだろうか?


そんな事を考えていると、いきなり腕を引かれた。







「帰るぞ」
こちらを見ないで手を繋いでくる。

「うん」
(…可愛い)

そう思うと同時に、先程の自分を見られてないといいなぁ、と思った。

きっと、随分情けない顔をしていたであろう。

背中をむけていたから大丈夫だろうが、こんな自分を彼に見せたくはない。


「辰馬」

暫く手を繋いだまま歩いていると、名前を呼ばれた。


「何?高す…うぉ!」
いきなり振り向いた高杉に、髪の毛を引っ張られて(痛い)、屈ませられたと思ったら、頭を撫でられる。

「…どうしたんじゃ?」

いきなり自分を撫でてくる彼が、何を考えているのか分かる訳もないので、聞いてみた。

「どうした…はお前だろ?んな暗い顔しやがって…」

やっぱり気付かれてた。
聡い彼は、いつも気を使ってくれる。

「…すまんの」

自分の頭を撫でる華奢な手を取って、ぎゅっと握った。

理由は言わなくても彼の事だ、気付いている。

「…馬鹿。別に心配なんかしてねぇよ」

「ほうか?」

悲しいのぉ〜と言いつつ、顔を赤くしてそっぽを向く彼を見る。
本当に彼が心配してくれてるのは判ってるから。


「高杉は、ツンデレさんじゃのぅ」

「なっ!」

ばっと振り向いた彼の顔を掴んで、自分の額と彼の額を合わせる。
「ありがとうの」
「おぅ…」


これから先、何があっても大丈夫だろう。

少し赤い彼の顔を見つめながら

そう、思った。



 
 

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