男性作家

□大沢在昌
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魔物

2007
角川書店

 大塚は麻薬取締官。ソ連崩壊後のロシアではマフィアが勢力を伸ばし、魚介類などを日本へ持ち込んでは中古車などを買い入れる表向きの商売の裏では、日本の暴力団との間の武器・麻薬などの取引が拡大していた。広域指定暴力団・陽亜連合の札幌本部長・高森をマークしていた大塚に、情報協力者・国井から連絡が入る。それによると陽亜と対立する地元の小さな組織・北領組がロシアから大量の麻薬を買い入れるというのだった。
 取引現場を抑えるため、万全の体制で臨む大塚たちだったが、情報は北海道警にも流れていて、現場で両者は対立。ブツは押えたものの、運び屋のロシア人・ロックマンを取り逃がしてしまう。ロックマンは銃撃を受けながらも警察官を素手で殺害し、何かを大切に抱えていた・・・。
 大塚はロシア人ホステス・ジャンナの協力を得て、ロックマンが抱えていたものの謎を知る。だが・・・。

 ストーリー展開はテンポがいいし、主人公が麻薬取締官という設定で、ロシア・マフィアと日本の暴力団との麻薬取引など、全体的な設定は悪くない。だが荒唐無稽な魔物退治や、中途半端な恋愛描写、そしてあっけない結末など、唖然とさせられてしまった。魔物退治は別の作家に任せて、大沢在昌は、大沢でなければ書けない小説を書くべきであろう。
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