男性作家

□大沢在昌
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魔女の盟約

2008
文藝春秋

 地獄島を脱出した水原英美は韓国マフィア「新世紀」の助力を得て釜山に潜伏し、帰国の機会を待っていた。新世紀のビジネスパートナー朴は福岡の暴力団「要道会」と手を組み、地獄島の権利を入手するために地獄島の旧来の利権を破壊した。
 釜山における要道会・菅原と朴の会合で、今度は朴の用心棒・金が二人を殺害した。目の前で起こった事件の意味が飲み込めぬまま、水原は金の行方を追っている中国人・白理の手を借りて、ソウル経由で上海へ高飛びするが・・・。

 「魔女の笑窪」の続編。前作が連作短編であるのに対し、この作品は長編小説。民族マフィアを本格的にテーマにした作品で、私にはとても新鮮に感じられた。同じ民族が国境を越えて定住している現状を考えれば、その黒社会が国境を越えて手を提携する可能性は低くなく、そうなった場合に当局の捜査は国境の壁にぶつかるのは必定。この作品ではリアリティのない要素も少なくないが、これからの国際犯罪を先読みしているように感じられる。
 物語は大沢らしくテンポ良く進み、飽きることはない。ただ風呂敷を広げ過ぎた観は否めず、結末が今ひとつになってしまったのが残念。しかし逆に考えれば、ここまで大風呂敷を広げられるのは大沢在昌しかいないとも言える。
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