女性作家

□山崎ナオコーラ
2ページ/2ページ

人のセックスを笑うな

2004
河出書房新社

 彼女はオレの通う美術の専門学校で講師をしていた。油絵を勉強したかったオレは、高校を出たあと一年間予備校に通ってから、三年制の学校に入った。十九のときにユリと、出会った。デッサンUの授業の先生だったのだ。そのとき彼女は三十九歳で、まあ、見た目も三十九歳だった。髪は長く真っ黒で、パーマをかけていたけれど、ほったらかしのぼさぼさで、化粧も口紅くらいしかしていないようだった。汚れたスモックを着てニコニコ笑っていた。

 ペンネームも奇抜なら、作品名も大胆。しかし個性的で驚くほど才能を感じさせられる作家である。19歳の青年の39歳の女性への恋愛感情。ありえそうななさそうな、しかしその微妙な感情が繊細に描かれていて、ストレートに心に響いてくる。読んで損のない作品である.
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ