■短編T■

□戻らぬ時
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――――戻らぬ時――――





「吹雪、紹介したい人がいるんです」



村正の言葉に、吹雪は動かしていた筆を止め、ゆっくりと振り返った。



「ごめんなさいね。仕事中邪魔してしまって」


そう言いながらも、いつものように
ニコニコと笑う村正の横には、見慣れぬ女が立っていた。



「姫時と申します」


女は、透き通る声で丁寧に一礼する。

村正と似ている、端麗な顔立ち。
長くたれた光る髪が、白い肌にかかっていた。



「私の妹の姫時です。今日から、ここへ
 顔を出す機会があるかもしれないので、その時はよろしくお願いしますね」


村正がそう言うと、姫時は柔らかく微笑んだ。
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