ギフト
□永遠の森
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果てなく広がるその森には、永遠の命を持つ魔術師が住んでいる。
エリゼが傭兵として雇われた魔術国では、そんな御伽話が伝えられていた。
何処にでもあるそんな御伽話を、エリゼは信じることなどしなかった。
魔術師など見たことが無いし、永遠の命なんて以ての外だ。
そんな御伽話をするよりも、力の限りを尽くして生き残ることが、傭兵である『死神エリゼ』には大切だった。
けれど、ある時国から追われたエリゼは、逃げ込んだ森の奥深くに古びた城を見つけた。
埃まみれの城内で、灯りを得ようとランプへと火を入れた。
そうして、城主であるトルガがエリゼの元へとやって来た。
その体一つで、全てを操る魔術師が。
それでようやく、エリゼは、伝えられていた話が御伽話ではないと知ったのだ。
永遠に命を宿す魔術師トルガは、何か願いがあれば叶えようと言った。
だから、エリゼは願いを口にした。
「暫く、私を匿ってくれ」
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「そういえば、匿えと言われたのは初めてだったな」
国から追われた罪人を匿った城の主が、ぼんやりと呟く。
彼は彼女から追われる理由を聞き出し、国王に会って追っ手を引かせた。
罪を問われなくなってからも未だに城に留まるエリゼは、くすくすと笑った。
用意した食事を食べて片付けも終え、一休みとばかりに本を読むトルガの横に座り、彼女の手は愛剣の手入れをしている。
その顔と同じくらいに傷に塗れた指が、鈍く光る剣を撫でた。
「今まで、ここへ来た人達は何を願って行ったんだ?」
指先で剣に刻まれた浅い傷をなぞり、エリゼは問い掛ける。
彼女の言葉に、少し考えてから、トルガは本を閉じた。