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□白雪姫
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森の奥には小人が一人
姫を待ってる小人が一人
たったの一人
***
白い雪がはらはらと舞う曇り空を見上げていた少年は、一つ息を吐いてから背中の薪を背負い直した。
息は白く、すぐに凍えた空気に溶けていく。
縺れた黒い髪に雪が乗る。
「あーあ。早くこれ売らなきゃなぁ」
少年はぼんやりと呟いて、ちらりと自分の商品を肩越しに見た。
彼の仕事は薪売りだ。
両親を早くに亡くした幼い彼が、どうにかありつけた仕事だった。
朝早くから薪を集めて、家々を回って売る。
収入は雀の涙程度だったが、それでも少年一人がどうにか生きていく事が出来る位にはなった。
ただ、それは売れたらの話だ。
今日はまだ一本も売れず、すでに時刻は昼を過ぎていた。
少年は、首から下げている両親の形見のペンダントを握り締める。
それは外気で冷えていたが、寒さに感覚を失った手ではもう感じられなかった。
「……がんばろうっと」
呟いて、少年は薪を買ってくれる家を探して村を歩いた。
戸を叩き、家人に薪はいらないか訊ね、首を横に振られて仕方なく家を離れる。
それを何度繰り返したことか、気付けば少年は村の外れまで来てしまった。
もう、村の家々は粗方訪ね終えてしまったらしい。
あとあるのは、村のすぐ傍にある深い森だ。
今日は諦めて帰った方が良いだろうか、と少年は思う。
昨日の残りの黒パンなら戸棚にあったはずだ。
まだ食べられるだろう。
とりあえず今日はあれを食べて、明日また売り歩こう。
そう考えた時。
「……あれ?」
森の中から、口笛が聞こえた。
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