Parallel
□眠る前にはキスをして
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夕方から降り続く雨の夜。
「…まだ雨降ってる?」
静寂の戻ったベッドルームで微かに聴こえた雨音。
「降り続いてるみたいだな」
答えたのは上半身を起こして時計を見てる年上の恋人。
すでに日付は変わっていたが、明日は休みだからと気にせず過ごすことができる…と言われたのが事の発端。
ニールは忙しい仕事が終わったばかりらしく上機嫌だなとは思っていた。
抱きしめあって、キスしあえば欲しくなるのは自然な流れでベッドへと移った。
そこまではいいのだが、好き放題抱かれたのは予想外だった。もうムリだと伝えても止めてくれず、何度も与えられる快楽に久しぶりに泣かされてしまった。
オレもニールがほしかった思いはあるので怒りなどはない。
体力的にムリとは言ったが、イヤとは言ってないことで本心は筒抜けだろう。
セックスが終わって呼吸は落ち着いたが、甘い痺れは治まらないでいる。
「刹那、シャワー浴びるだろ?」
「…でも力入んない」
シーツはぐちゃぐちゃ、身体もべたべただ。きれいにしないとゆっくり眠れそうにない。
腕を伸ばして、暗に連れて行けと訴える。好き放題したんだから、という意味も含んでいる。
「ありゃま、オレのせいだなぁ」
そうするのが当たり前のように、シーツごとオレを抱きかかえてくれた。
お姫さま抱っこというやつだ。最初は嫌だったが、抵抗する体力は残っていないので、何も言わずに運んでもらうようになった。
10代の身体は小さかったが、21歳の身体も抱えきれるニールに対して悔しさはある。
それでも情事後の甘えられる時間のひとつだと思えば、気にならなくなるから不思議だ。
「嬉しそうにしてるな。悪いなんて思ってないだろ」
「んー?だってそれだけ刹那が感じてくれたってことだし?」
失敗。余計なことを口にしてしまった。
ニールの顔はすっかり緩んでいる。
深い笑みというより締まりのない表情と言うほうが正しい。
ニールだって疲れているだろうになぜか感じないのだ。
表情がそう思わせるのだろうか。
連れて行かれた浴室ではシャワーの水音が響いていた。
「身体洗おうか?」
「自分で洗う」
意識が朦朧としているなら任せるが、上機嫌な今はどんないたずらになるかわからない。
いたずらはともかくキスの拒否はできなかった。シャワーを浴びながらキスを送られる。
泡を流した後、目が合った。近づく瞳はそらせず、ちゅっ、ちゅっと水音混じりの口付けが響いた。
「すっげー、色っぽいよ、刹那」
「あんただって、同じ、だ」
上半身に流れる滴、濡れたブラウンの髪をかきあげる仕草…。
見慣れてるはずなのにドキッとしてしまうのだ。
「さっきから顔が緩んでる」
「恋人に色っぽいと言われて喜ばないやつはいないよ」
シャワーが止められたかと思えば、すぐに抱き寄せられていた。
耳元で名前を囁きながら、背中を撫でてくることでニールの意図に気づいた。
「…また、やるのか」
「煽ったのは刹那だぜ」
勝手なことを言う、と反論は思い浮かんだが、煽られたのは自分もだと気づき、再びニールを求めた…。
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