奥州・平家

□ここより永遠に
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銀×望美 拍手御礼SS

「ここより永遠(とわ)に」



白にほど近い、薄灰色のスーツ。

クリーニングから卸したての、肌に触れる硬い感触が心地よくて。


それに、この場所。


階段の下、これからやってくる愛しい方を想うと、つい何度も階段の上の方を振り仰いでしまう。

自分がいるフロアに広がる華やかな会場など、あの方がいなければ意味を成さない。




かつ、かつっ…

覚束なげにヒールの音を立てて降りてくる足音。

ああ。

それだけで、私の胸は高鳴るのです。




振り仰げば、階段を降りてくる貴女がいる。

細身の肢体に清楚な白い紗を纏い、紫苑の柔らかな髪をふわふわと揺らして。

「神子様」

声をかければ、淡い翡翠色の瞳が私を捉え、大輪の華にも劣らない満面の笑みを浮かべてくださる。

その笑みが私に向けられることが、どれほど幸せか貴女は知らないでしょうね。

「銀、お待たせ」

「いいえ。貴女がいらっしゃるのを待つこの時間すら、甘い至福の時にございます」

「ありがと」

くすぐったそうに笑い、照れに染まる頬は、貴女の可愛らしさを引き出して。


思わず頬に手を伸ばしかけて、貴女の視線に気づく。

「銀?」

「――いいえ」


手を差し出す。

頬に触れる為ではなく、貴女の手を取るために。


「お手を。私の、――愛する人」

貴女はほほえみ、首を傾げるように小さく頷く。

「はい」

差しだしてくださる手をとれば、甘えるように擦り寄る小さな身体。

左手で左手をとり、右手を腰に回せば、貴女の右手が私の右手に添うように触れる。

会場をエスコートしながらも、寄り添う身体が離れることはない。


「貴女のお側に控えられる私は幸せです」


耳元に唇を寄せて囁けば、貴女は嬉しそうに微笑んで下さる。


「うん…」

「貴女にこうして触れられて。他愛ない会話を交わし。貴女の香りに、肌の温もりに、貴女の声に酔いしれられて…」

「ち、ちょっと、銀っ」


熟れた桃のような頬の色をさせて、眼差しには覚えず艶が見え隠れしている。

「なんでしょう」

「あ、あの…恥ずかしいから、ここでは…その……、…耳元で囁かないで」


口元が緩む。

全く、そんな風に瞳を潤ませて懇願することすら、私を煽るというのに。


貴女はきっと、そんなことに気づいてもいないのでしょうね。


「わかりました。ここでは、やめましょう」

「ありがとう、銀」



「これからは、ずっと…何時までも、貴女の傍で愛を囁き続けさせていただきますから」


「…っ!!」


唇が耳朶に触れるか触れないかの距離での睦言にびくりと反応して耳を抑える、…そんな仕草すら愛しい。



ここから永遠に…

これから永遠に…



その愛しさを、この胸に抱きしめていたい……





END






'08/4拍手御礼SSは、銀でした―。
全員を書いた作品では「重衝さん」を書いたので、「銀」は何気に初です。


今回の銀は艶だ!!!


をテーマに(爆)書いてみましたが、如何でしたでしょうか…
因みに作品世界のイメージは銀EDスチル時の出来事、です。


閲覧有難うございました!!

2008.04.01

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