景時・譲
□君が居る時の天気
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君が居る時の天気
洗濯物を取り込もうと濡れ縁に顔を出すと、景時はそこに先客を見つけた。
卯月の季節に相応しい、柔らかい風にふわりとたなびく紫苑の長い髪。
白魚のような繊手も、垣間見える横顔も、思わず触れたくなるほどに滑らかで。
声をかけるのも忘れて見とれていると、先客――望美が気配に気づいたのか振り返った。
「あ、景時さん」
「や、…日向ぼっこ?」
見つめていたのがバレてはいないか、という内心の動揺を悟られないよう問うと、望美ははい、と花が咲くように柔らかく笑んだ。
「あんまりいいお天気だから。日差しは暖かいし、風は気持ちいいし」
「そうだね〜」
心底同意の声をあげた。
今日は日差しが適度に差し込んできて、穏やかな風も初夏を告げるかのよう。
「景時さんも日向ぼっこしていきませんか?」
きらきら、と望美の目が輝く。自らの傍らに招く手に、景時はふらりとつられてやってくると、示された場所に腰掛けた。
望美の言うとおりに、さわさわと頬を撫でる風が気持ちいい。
庭に幾重にも張られたシーツも、今日干されてさぞ幸せだろう。
光をうけて真っ白に輝きはためくシーツを見ると、自然に頬が緩んだ。
洗濯物がとってもよく乾いて。
そして隣に君が居て。
それだけで、オレの中の天気は快晴が続く。
ことん、と肩に重みを感じたのはその時だった。
「望美、ちゃん…?」
「……えへへ」
肩に頭を預けてくる、その表情は見えないけれど。
くすぐったそうに笑う、照れた表情が目に浮かぶようだった。
「少しだけ、こうしていていいですか…?」
「……うん」
春の陽気のように、そっと触れて甘えてくる。
肩口に寄せられた頭をそっと抱き寄せて、景時は望美の頭に自分の額をそっと預けた。
END
★49 傍に、
今日がとってもいいお天気だったので…(*´∀`*)
いいお天気といえば景時ですね。ほわほわ。
20080421