弁慶・ヒノエ
□ツミとバツ?
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「こら――――っっ!!!!将臣、望美っっ!!」
「逃げろ、望美っ!」
賑やかな声が遠くからかすかに聞こえてきて、おや、と弁慶は書物から目をあげた。
屋敷全体に響きわたりそうな大声は九郎のもの。
(また何かイタズラして怒られてるんですかね)
九郎の対の蒼い髪の男は、いい年してたまにお茶目なイタズラをやらかす。
たまに自分も荷担しているから敢えて何も言わないが、今日は望美が仲間らしい。
賑やかなのはいい。
少しぐらい煩い方が、活気に満ち溢れている。
くすくすと笑みを零しながらも弁慶が読書を再開しようと視線を転じようとした、そのとき。
ばたばたっ、と物凄い勢いで廊下を走る音が聞こえたかと思うと、不意に弁慶の自室の戸が開かれた。
紫苑の髪が、薄暗い部屋のなかでひときわ鮮やかに輝く。
「――望美さ、」
「かくまってください弁慶さんっっ!!!」
あっけにとられて目を見張った弁慶をよそに、望美は部屋に転がり込んだのだった。