弁慶・ヒノエ

□「流されるなら貴方と」
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拍手御礼SS
ヒノエ×望美


「流されるなら貴方と」



雛まつりのお雛様を飾って、片付けをしてからまた雛壇の前に戻ってきた望美は、目を丸くした。

飾って間もない雛壇の前に、いつ来たのかヒノエが立っていたからだ。


普段の落ち着いた色合いのリビングルームに、上から下まで真紅を身にまとったヒノエは、不似合いというか、目立つ。

しかし真紅の雛壇と向かった今日のヒノエは、なにか雛壇と関連性があるように調和して見えて。


「ヒノエくん?」

望美の声に、ヒノエは艶やかな表情で振り返った。

「やぁ、望美」

「もうっ、いつから居たの?不法侵入だよ」

有川家からふらりと春日家に遊びに来たのだろう。
肩をすくめてみせるヒノエの表情に、悪びれた様子はない。

むしろ、望美とのやりとりを楽しんでいるように見える。


「この人形は、神子姫様のかい?」

「そうだよ。生まれた年に、両親が買ってくれたの」

女の子の健やかな成長を望む象徴。


ひな祭りが終わってしまえばすぐしまってしまう、それがとても残念なのだけれど。

そういうと、ヒノエはへえ、と自分の顎を撫でた。
「仕舞うのかい?コレ」

「うん、大切にね。来年も再来年も、ずっと使うから」

「へぇ…。神子姫様のところじゃそうなんだ」

「え?」


ずっとそうなのだとばかり思っていた望美は、ヒノエの言葉に目を丸くする。

「ヒノエくんのところは違ったの?」

「あぁ。庶民にこんなもの買う余裕なんかあんまないしね。こういう簡単な紙とかで、」

テーブルに置いてあった広告の紙を一枚手にとると、ヒノエは器用に紙を折っていく。

あっという間にひな飾りに似せた形を作り上げると、望美の手に乗せてやった。

「作るんだ。ひな祭りが終われば、子供の厄を吸い取ったこの飾りを海に流す」

「へぇ―…」


大ざっぱに折られたようで、繊細な折り跡が見られる折り紙を、望美はためつすがめつして眺めた。

「そんなんで良ければ、神子姫様にさしあげるよ」

「わ、ありがとう!」

「海に流しにいくときは、是非ともオレを呼んでほしいね」
「流しちゃうの、勿体無い…ね」

「なに言ってるんだ。こいつは、神子姫様の厄を祓ってくれる大切な役目を担っている。役目を果たさせてやらなきゃ、可哀想だろう?」

「そうだ…よね」

ぽつり、と望美が呟いて俯く。

「どうした?」

「せっかくヒノエくんが作ってくれたのに…と思っ、て」

「!」

そっ、と伺うように見上げてきた艶めく視線は、反則だとヒノエは内心で思う。

「…馬鹿だな」

頬を僅かに染めて、ヒノエは望美の髪を梳いてやる。

「毎年作ってやるよ。オレの神子姫様のために」


遠回しな告白を、望美はちゃんと感じ取ったようで。

望美は嬉しそうに微笑んで、引き寄せてくるヒノエの腕に身を任せた。




ED






「ヒノエ de ひな祭り」

でした!


タイトルは全然関係ないですが…
「ひな飾りが流されてしまうように貴方が何処かへ行ってしまうなら、共に行こう」
的なニュアンスです。

お互いに別れを知っていますからね。



あ、因みに昔ひな飾りを川に流していたっていうのは本当みたいです!
先日TVでやってました(笑)



初・拍手御礼SSでした☆
読了多謝!



2008.03.03

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