将臣・九郎
□特権
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★08 それじゃなきゃ駄目
「わぁっ……!」
大きく口をあけたまま空を見上げた望美に、隣に座る将臣は苦笑を漏らした。
「カオ、マヌケ」
「もうっ!私よりも花火みなよ!」
ほら、と嬉しそうに夜空を指し示す、その横顔が明るいオレンジ色の光に照らし出される。
殆ど自分たちの真上に咲き乱れる大輪の光る華に、望美は凄い凄い、と無邪気に歓声を上げた。
(俺は、花火よりも)
花火を見るフリをしながら、将臣は望美の横顔を盗み見た。
あどけなく笑う表情を、ずっと昔から見てきた。
昔から━━それは幼なじみの特権。
「変わんねえな」
「なにが?」
独白に望美が振り返るから、将臣はぐしゃりと頭を撫でてやる。
「昔から、望美は花火が好きだな―と思って」
「そう?」
「夏祭りの度に、打ち上げ場所の間近で見たいってきかなくて。俺も譲も連れ回された」
「あは、そんなこともあったね」
「で、今もそれは変わんねえ、と」
「だって、やっぱり近くで見たいじゃない」
ぷうっと頬を膨らませるが、幼い子が拗ねているようにしか見えない。
あどけない表情に、将臣はははっと笑った。